COINS研究チーム、血液脳関門を通過するナノマシン開発に成功 難治性脳神経系疾患の治療薬開発に光明か

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プレスリリースより

2017年10月18日、片岡一則センター長(東京大学政策ビジョン研究センター 特任教授)が主導するCOINS研究チームが、脳への薬剤送達を妨げる「血液脳関門(BBB)」を高い効率で通過し、脳内へ集積する「BBB通過型ナノマシン」の開発に成功したと発表した。研究成果は2017年10月17日(火)付「Nature Communications(英国科学誌)」に掲載された。

既存技術と比較し「桁違いに高い効率で通過」

先進国を中心に高齢化が進行し、アルツハイマー病に代表される難治性の脳神経系疾患は深刻な社会問題となっているが、今後さらに高齢者人口の増加に伴う大幅な有病率の増加が予想されている。脳神経系疾患治療を困難にしている最大の障壁が、血液脳関門(Blood-brainbarrier:BBB)と呼ばれる生体内バリア機構。BBBは脳血管内皮細胞を主体として、循環血液と脳神経系の物質輸送を制御する機能を担っており、脳の活動に必須な栄養素を選択的に取り込む反面、薬剤の脳への送達を著しく制限している。現在、アルツハイマー病の対症療法として臨床で用いられている低分子薬剤であるドネペジルであっても、脳への集積量は投与量の0.1%に満たないのが現状という。そのため、薬剤がBBBを効率的に通過するための技術開発が世界中で行われている。このような背景において、COINS(CenterofOpenInnovationNetworkforSmartHealth、コインズ)研究チームは、血糖値の変化という簡単な刺激に応答して、既存技術と比較して著しく高い効率でBBBを通過し、さらに脳内の神経細胞へと集積する「BBB通過型ナノマシン」の開発に成功した。

(リリースより)開発されたナノマシンの構造

BBB通過型ナノマシンは、外部刺激(グルコース濃度の変化)に応答して能動的にBBBを通過する機能を有している。食事などによって血糖値が変化することに伴うBBBの生理的な反応を利用した点が特徴で、空腹時にナノマシンを注射しその後に食事をするという簡単な方法だけで、脳内に薬を効率良く運ぶことができるという。このBBB通過型ナノマシンは、様々な薬を脳内に運ぶことができ、特に、抗体医薬や核酸医薬など従来神経疾患には適応困難であった高分子医薬の脳への送達を初めて可能にする画期的な基盤技術といえる。根本治療法が確立されていないアルツハイマー病などの難治性脳神経系疾患の治療薬開発を大幅に推進することが期待される。

この研究成果は2017年10月17日(火)付「Nature Communications(英国科学誌)」に掲載されている。

 

血液脳関門(Blood-brainbarrier:BBB)とは

脳血管内皮細胞を主体として、循環血液と脳神経系の物質輸送を制 御する機能を担っており、脳の活動に必須な栄養素を選択的に取り込む反面、薬剤の脳への送達を著しく制限する「生体内バリア」とも言える組織。BBBを構築する脳血管内皮細胞には、脳のエネルギー源であるグルコース(ブドウ糖)を輸送するためのグルコーストランスポーター1(GLUT1)が他のトランスポーターと比べ桁違いに多く存在しており、薬剤またはそのキャリアにグルコースを結合させて脳へ送達させようという試みが世界中でなされていた。

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