国内初「精神科領域における医師向けオンライン診療手引書」が完成
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の岸本泰士郎専任講師らの研究グループは、精神科領域における遠隔(オンライン)診療に関する医師向けの手引書を作成し、このほど公表した。この領域における医師向けのガイダンスとしては国内初となる。
「診療」「法律」「技術」の面からポイントを解説
2018年の診療報酬改定により「オンライン診察料」「オンライン医学管理料」が設定され、一定の条件のもとでオンライン診療が保険診療として認められることになった。改定直前の3月には厚労省より「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が出され、基本的な手順や要件などが提示されたが、各診療科における個々の条件、要件について具体的に検討した資料はこれまでなかった。特に、通院の必要がなくなるオンライン診療と精神科領域の疾患診療は、アドヒアランス向上において親和性が高く、普及が望まれている分野のひとつと言える。
従前から精神科領域における遠隔医療(オンライン診療)の研究に携わっている慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の岸本泰士郎専任講師らは、この課題に対処するためタスクフォースを編成。アメリカ遠隔医療学会(ATA)の協力と国内の医師・法律家・技術専門家による協議を重ね、安全で質の高い精神科の遠隔医療を担保するための精神科領域における医師向けの手引書を作成した。なおこの手引書は、2016〜2017年度に実施した日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究の一部として作成された暫定版を発展させる形で完成させたもの。
手引書は、診療、法律、技術に関する3つのセクションから構成される。診療のセクションでは、遠隔医療を開始するための準備事項、診療の質を保つためのポイント、プライバシー保護、緊急時 の対処法などについてまとめてあり、医師がそれぞれのポイントが満たされているか確認できるチェックリストも掲載。法律、技術のセクションでは、それぞれ遠隔医療に 関連する専門的事項につき、医師が理解しておくべき点について要諦を示した。
Web上に公開、定期的に改定も
研究グループでは、この手引書を多くの医療者に利用してもらうため、Web サイト等で公表するとともに、最新の事情を反映し定期的に改定するとしている。公開された手引書は以下より参照できる。