横浜市「医療マンガ大賞」を創設 テーマは「患者と医療側のギャップ」
横浜市医療局が医療の啓発にマンガを活用する「医療マンガ大賞」を創設し、2019年9月30日から作品募集を始めた。編集者や医療を取り扱った作品が代表作の作家、SNSで情報発信する医師グループ、大手医療情報検索サイトが参画し、医療側と患者側のコミュニケーションギャップをテーマに原作エピソードを選定、漫画作品をネットで募集する。期間は10月10日まで。
テーマは「コミュニケーションギャップ」
横浜市医療局が展開する広報プロジェクト「医療の視点」の最新の取り組みは、マンガを活用したものとなった。医療従事者と患者側の認識や想いの違いを可視化することを目的に、10個の原作エピソードを用意。広く一般に漫画作品を募集する。10個のエピソードのうち6個は、従前より「医療の視点」に協力する医療情報プラットフォーム、メディカルノートの各分野の医師から監修を受け制作したエピソードで、残りの4点は、SNSで医療情報の啓発を行う「SNS医療のカタチ」の協力のもと、Twitterで募集し選定した体験エピソードとなる(一覧はこちら)。
作品募集開始となった9月30日には、エピソード制作や選定に関わった医師、また応募作品の審査員となる漫画家、編集者で、今回のテーマである「ギャップ」をお題にトークセッションが行われた。
多くのヒット作に編集者としてかかわり、今回の審査員を務める佐渡島庸平氏(コルク代表取締役、編集者)は医療にかかわるギャップについて、まず「医療従事者は患者側に正しい情報を伝えなければ、理解してもらわなければと思っているが、対して患者は正しい医療情報を知ることにインセンティブがない。これこそがギャップ」と水を向ける。
これに応じて大塚篤司氏(皮膚科医、「SNS医療のカタチ」メンバー)は「医療現場の進歩は速く、医師と患者の間には圧倒的な情報量の差がある。(その意味で)医師は患者の未来が見えているが、患者自身には見えていない。そのことを踏まえずに伝えてしまうということが起こる」とし、情報の非対称からくる問題を指摘した。
今回6つのエピソード作成にかかわった井上祥氏(メディカルノート代表取締役、医師・医学博士)は、作成エピソードのテーマとした「転院/退院」「人生の最終段階」「脳卒中」の3つに、特に大きなギャップを感じているという。近年は国の政策により病院の機能分化が加速し、急性期の手術処置が終われば速やかにリハビリの専門病院等へ転院することが求められるが、患者側は「追い出されるのか」と受けとる向きもあることなど、自身の体験も踏まえて言及した。
デビュー作『Ns’あおい』がヒットしテレビドラマ化もされ、その後も断続的に医療をテーマにした作品に取り組んでいるこしのりょう氏は、作家活動を続ける中での「視点の変化」について語った。『Ns’あおい』が始まったきっかけは、雑誌編集部が、看護師がパートナーのこしの氏に、当時社会現象にもなっていた『ブラックジャックによろしく』の潮流に乗れるような作品を求めたことがきっかけだという。したがってこの作品はもっぱら看護師視点で「ダメな医師や組織」に喝を入れるような内容だったが、後年医師を主人公とする作品(『町医者ジャンボ!!』『Dr.アシュラ』)を描くようになって、医師側の視点も理解できるようになってきたと述懐した。
10月10日の応募締め切り後は、トークセッションに参加した4人に加え、医師の筑丸由美子氏、横浜市副市長の荒木田百合氏も参加し6人で作品審査を実施。11月初旬をめどに大賞1作品、入賞7作品を選定し、受賞作品を横浜市公式サイト、横浜市内配布広報物、各審査員のSNS等で利用する予定だ。
外部サイト:医療マンガ大賞 | 医療マンガ大賞 エピソード