64カ国200以上の集団における全ゲノム解析が完了、副作用の地域差も明らかに
アジア64カ国の協力による国際共同研究グループGenomeAsia100K Consortiumは、アジアのさまざまな人類集団のゲノム試料について、1,739人分の全ゲノム塩基配列の解析を完了し、解析結果を発表した。今後も探索研究を進め、ゲノム医学研究の基盤情報となることを目指し、プロジェクトのWebサイト等で成果を公開していくという。
アジア10万人の全ゲノム塩基配列の解析を目指すプロジェクト
「GenomeAsia100K Consortium」は、アジア各地域の健常者および患者を合わせて10万人の全ゲノム塩基配列を解析することを目指す国際共同研究グループで、日本からは国立国際医療研究センター・ゲノム医科学プロジェクトの徳永勝士プロジェクト長、コー・セクスーン特任研究員らが参加している。今回その第一段階として、アジアの64カ国に居住する200以上の集団から1,739人のゲノム試料を収集し全ゲノム塩基配列の解析を実施。ゲノム変異の参照データを作成した。
まずアジア人の集団としての特徴について解析したところ、インド人、マレーシア人、インドネシア人は複数の先祖集団を持つこと、日本人を含む東北アジアのグループと、極北の諸集団から北米先住民につながるグループに大別されることなどがわかったという。また、アジアにおける先行人類として知られるデニソバ人の遺伝的特徴が、特にメラネシア人などに強く残されていることも確認された。
さらに、本研究で検出されたゲノム変異のうちタンパク質のアミノ酸配列を変える変異に注目すると、23%は公的データベースに登録されていない新たな変異で、0.1%以上の頻度で検出された変異はおよそ19万5千個にも上ったという。これらはアジアの特定の集団では比較的高い頻度で存在すると考えられ、今後その医学的な意義の解明が期待されるという。特に注目されるのは各種の薬剤による副作用に関与することが報告されている遺伝子変異の分布だ。8種の薬剤について、アジア諸集団の中でも顕著な集団差があることが明らかになる(図3)など、多くの興味深い情報が得られているという。
同プロジェクトでは今後、より大規模なアジア集団の全ゲノム塩基配列の解析の研究を行い、ゲノム医学研究の推進に貢献することを目指していく。得られた成果は適宜、GenomeAsia100K Consortiumのホームページ、およびEuropean Genome-phenome Archiveのホームページ(accession number EGAS00001002921)にて公開していく予定だという。