浜松医大ら「自閉スペクトラム症診断補助装置」の医師主導治験を開始

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 浜松医科大学、大阪大学、鳥取大学、弘前大学、福井大学とJVCケンウッドは、同社製の視線計測装置について自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)の診断補助として医療機器の承認を目指し、多施設共同試験(医師主導治験)を開始したと発表した。治験終了後の2021年度中にも医療機器承認を目指す。

LEDで瞳孔を把握、視線計測

 発達障害の一つであるASDの発症時期は通常3歳以前であり、罹患による日常生活・社会生活の機能障害が長期に渡るため、成人期においても生活に困難が生じやすく、薬物治療・生物学的治療も未開発だ。しかし発達支援を始めとして、個々の行動特性に即した対応(合理的配慮)で予後改善が見込めるため、診断は極めて重要な位置を占める。だがASDの診断に納得できず医療機関を転々とする養育者は多く、その結果、子どもたちへの適切な介入が遅れることもある。

 ASDを診断するのは一般的に小児科医や小児精神科医などであり、子どものコミュニケーションの取り方などの行動学的所見を詳細に観察・評価して診断する。通常、観察された行動学的所見の評価は、米国精神医学会精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)にまとめられた診断基準に基づき行うが、診断基準に当てはまるかどうかの評価は、医師の臨床経験や観察眼に沿った判断に委ねられる。一度の面接だけで医師がASDの診断を確信をもって行うことは容易でない上、その時々の子どもの機嫌や診察の環境に左右されることもあり、客観的かつ安定して診断支援ができるソリューションが求められている。

JVCケンウッドの製品ページより

 この課題解決のため、JVCケンウッドと5大学に佐賀大学、千葉大学を加えた8者は、2015年ー2018年度にかけ、AMED(日本医療研究開発機構)の「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業(ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト)」の支援を受け、診断支援システムの研究開発を行ってきた。ベースとなるのはJVCケンウッドが開発した視線計測装置「Gazefinder」。近赤外線LED発光装置を搭載したモニター型装置で、LEDの光に対する角膜の反射を利用し瞳孔との位置関係を把握、モニター画面上の視線を算出する。正確な把握には被験者ごとに行うキャリブレーションが欠かせないが、同製品は乳幼児を含む1,000名以上の計測テストを経て独自のアルゴリズムを開発しており、約15秒で正確なキャリブレーションが可能だという。

 今回、その成果を基にASDの診断補助装置としての医療機器の承認を目指し、PMDA(医薬品医療機器総合機構)に治験届を提出。浜松医科大、大阪大、鳥取大、弘前大、福井大にて医師主導治験を開始した。なおこの治験はAMEDの令和元年度「医療機器開発推進研究事業」に採択されており、治験の結果次第で2021年度中にも医療機器承認を目指す。

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