脈拍、SpO2、ビリルビン濃度を同時計測できるウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発、世界初
横浜国立大学と横浜市立大学医学部小児科学は、2020年1月22日、ゴム材料のような柔軟材料を用いることで、光学的に新生児黄疸と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、脈拍等複数バイタルサインを額から同時に計測できる「ウェアラブル型マルチバイタルセンサ」の開発に世界で初めて成功したと発表した。
3つのバイタルサインを同時計測、Bluetooth通信で送信
センサを開発したのは、横浜国立大学工学研究院の太田裕貴准教授、横浜市立大学医学部小児科学の伊藤秀一主任教授、魚住梓助教らの研究グループ。新生児は胎内から胎外へ環境が変化することで、臓器を始めとした体内環境が非常に不安定となり、そのため、黄疸を起こすとされているビリルビン濃度を始めとして複数のバイタルサインの経時的な計測が必要不可欠とされる。
そこで研究チームでは、ゴム材料などの柔軟な材料を新生児とデバイスのインターフェースに用いることによって、新生児の負担が小さく、高密着に装着できるウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発することで、継時的な計測が可能となるかに取り組んでいる。
デバイス開発は横浜国立大学工学研究院が担当し、微細加工技術を用いて柔らかい基板上に LED、フォトダイオード(PD)、IC、Bluetooth素子を載せた回路を作製、その回路を、生体適合性が高く柔軟なシリコーンゴム材料の中に封入した。今回、横浜市立大学医学部小児科学の協力により、開発したデバイスを出生 0~5 日後の新生児に対し装着し、作製したデバイスによる測定結果と、従来から用いられている各種バイタルサイン計測デバイスによる検査の結果を比較、相関があることを確認したという。
研究チームは、新生児医療における重要なバイタルサインである脈拍、SpO2、黄疸度(ビリルビン濃度)の測定については現在、単独機器での計測しかできないのが現状で、小型、ウェアラブル、個人で購入可能かつ同時測定可能なデバイスが実現すれば、新生児の入院日数を短くし、患者の金銭的負担と医師・看護師の負担を軽減することができるとしている。今後はさらに心電や呼吸など他のバイタルサインの計測と連動し、包括的に新生児の様々なバイタルサインを計測できるウェアラブルセンサを開発する予定だ。