初診からのオンライン診療、「診療前相談」を前提に認める方向へ 年内にも指針に盛り込む
厚生労働省は10日、都内で「第18回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催。この回で、年を通じて検討してきた「初診でのオンライン診療」に関する議論の取りまとめを提示、一部の扱いについて議論はあるものの概ね了承された。次回にも具体的な指針の改定案を提示する方針。
必要な情報が不足していても『診療前相談』で判断
検討会の事務局がこの日提示した資料には、これまでの議論を踏まえ、初診でどのようにオンライン診療を実施するかの全体のフローが提示された。基本的には日本医師会などが定義を示している『かかりつけ医』が行うべきだとしながらも、現実として『かかりつけ医』を持たない人が若い層を中心に多く存在することから、指針ではそこにはこだわらず、症状に加えて診療に必要な情報があるか、または得られるかを、医師本人と患者自身がリアルタイムで行う「診療前相談」で判断し、両者合意の上でオンライン診療へ移行するかを決定するとした。前回までの議論では「オンライン上のやりとり」といった曖昧な表現で議論されていた部分で、今回名称を与え、ある程度概念化し提示したかたちとなる。
なおこの『診療前相談』は単に口頭のみで医師と患者がやりとりするものではなく、実態を把握する観点からも診療録(電子カルテ)にその内容を記録するとされたが、厚労省側はこの枠組みはあくまで診療行為ではないとの認識を示した。これに対し、一部の診療側構成員からは「診療できるかという判断において専門性を提供しており、診療行為に極めて近い」「診療行為そのものだ」と異論が上がった。また同時に、診療行為であるという意味で診療報酬における手当ても考慮するよう求める意見が上がったが、厚労省側としては診療行為でない以上認めない方向で、費用を請求する場合は現状行われている「選定療養費」枠を使うなどの手法で対応するよう求めるとみられる。
『かかりつけ医』『かかりつけの医師』 用語と概念を使い分け
また今回の資料では、従来使われている『かかりつけ医』と、以前の検討会で事前に確認が行われた『かかりつけの医師』の言葉が同時に使われ、改めて違うものであることが提示された。昨年の検討会(既報)では、オンライン診療に関してはいわゆる『かかりつけ医』でなくとも、なんらかのかたちで以前診療したことのある医師が行うべき、という意味で『かかりつけの医師』という用語を使うことが確認されており、今回、改めてその意向が示された。ただこれまでの議論で定義についてはっきりと固まっているわけではないため、指針改定の際には明確な提示を行うよう複数の構成員から指摘があった。なお初診でのオンライン診療においても、今回概念化された「診療前相談」を行うのであれば、『かかりつけ医』『かかりつけの医師』でなくとも診療を行える枠組みとなっている。
その他、今回のとりまとめでは、日本医学会連合がまとめた「オンライン診療の初診に適さない症状の提言」を踏まえて診療するか判断すること、処方については現状の時限的・特例的措置をそのまま恒久的措置として採り入れることなどが提示され、構成員からは「これまでの議論をよくまとめている」と概ね高い評価がなされた。この結果を踏まえ、厚労省では次回には具体的な案文を提示し、年内にも指針改定を行いたい意向。