CT画像からがんの骨転移を自動検出するAI開発、専門医と同等の精度達成 東京医科歯科大

 日本の研究グループが、CT画像から「がんの骨転移」を自動で検出可能な新たなAIモデルを開発することに成功したと発表した。また、開発したAIモデルが整形外科および放射線科の専門医と同等の検出精度を示し、若手医師の画像診断精度を向上させることも確認できたという。

若手医師の診断制度向上に寄与

図1 AIモデル概略

 研究成果を発表したのは、東京医科歯科大学病院 がん先端治療部・緩和ケア科 佐藤信吾講師、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 整形外科学分野 吉井俊貴教授、画像診断・核医学分野 立石宇貴秀教授、株式会社NTTデータグループの研究グループ。2016年から2022年にかけて東京医科歯科大学病院において撮影された骨転移患者255名のCT画像データから得られた283の骨転移ありCT画像データ(計5991スライス)と、192名のがん患者(骨転移なし)から得られた192の骨転移なしCT画像データ(計88,799スライス)をAIモデルの学習に使用した。
 アノテーション※1は複数の整形外科専門医の合意の元に手作業で行われ、アノテーションが付与された骨転移ありCTスライスと、骨転移なしCTスライスを教師データとして利用し、学習モデルにはセマンティック・セグメンテーションモデル※2の1つである「DeeplabV3+」を採用した(図1)。

図2 AIモデルによるがんの骨転移の検出

 開発したAIモデルの感度※3および陽性的中率※4を評価したところ、スライス毎の評価で感度0.78、陽性的中率0.68と、これまでに他施設で開発されたAIモデルと遜色ない結果が得られた(図2)。また、開発したAIモデルの医療現場での有用性を評価するため、12名の読影医(整形外科:専門医3名・若手医師3名、放射線診断科:専門医3名・若手医師3名)による読影試験を実施し、ヒトとAIモデルの読影精度を比較しました。その結果、開発したAIモデルの感度は、専門医の感度に匹敵し、若手医師の感度よりも高いことが明らかになったという。さらに、若手医師がAIモデルの予測結果を参照しながら2度目の読影試験を実施する検証をしたところ、AIモデルを用いることで読影精度が上昇することが示された。

 研究グループでは、若手医師による読影も含め「がんの骨転移」を早期に発見できれば早期から適切な治療を開始でき、骨折や下肢の麻痺によって生活の質が低下するがん患者を減らせる可能性があるとしている。

※1 アノテーション
教師データ(正解データ)作成の際に、使用するデータ(本研究では画像データ)にタグやラベルを付与する作業のこと。

※2 セマンティック・セグメンテーション(領域分類)
画像全体や画像の一部の検出ではなく、画像データをピクセル(画素)単位でタグ付けやカテゴリ分けを行うモデルのこと。

※3 感度
この文脈では「実際の骨転移病変のうちAIモデルが検出できた病変の割合」を指す。

※4 陽性的中率
この文脈では「AIモデルが検出した病変のうち実際の骨転移病変の割合」を指す。

論文リンク:A New Deep Learning Algorithm for Detecting Spinal Metastases on Computed Tomography Images(Spine)