医薬品の安全性に関するテキスト報告データを評価するAI開発 京都大学とエクサウィザーズ

 京都大学とエクサウィザーズは、公的機関が公開している事例とその評価結果をもとに、医薬品の安全性に関するテキスト報告データを評価するAIを開発したと発表した。今後数年での実用を目指すという。

「ヒヤリ・ハット事例」での対策必要ケース相当の内容を抽出

 薬局で発生した調剤や疑義照会等に関する薬局ヒヤリ・ハット事例は、日本医療機能評価機構が定期的に収集し公表している。令和元年度では約 14.5 万件報告され、このうち、医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、「規格・剤形間違い」、「薬剤取違え」、「その他」及び「疑義照会」に関する事例から抽出を行い、この抽出事例に対し安全管理対策の要否について検討を行っている※1。そして評価結果を踏まえ、医薬品の製造販売業者等による対策の必要性の有無に応じて、医薬品の物的要因に対する安全管理対策を実施している。

 今回、京都大学とエクサウィザーズは共同で、PMDA が実施した過去の評価結果を学習させた安全対策要否の評価AI を開発。事例の内容や製剤の特性等に応じて PMDA が設定した安全対策要否の 5 段階評価※2を AIに行わせたところ、対策が必要と PMDA が評価した事例(「評価 1」及び「評価 2」)に対し、AIが96%の精度で同様に評価できたとした。添付文書等の薬剤データベースにおける薬効情報や規制区分等の情報を反映することで、事例の内容に含まれる重篤な健康被害を伴いうる薬剤の情報を抽出及び評価する手法も活用しているという。

 両者はAIの活用により、対策が必要と考えられる事例の抽出プロセスを効率化することで、将来的には、PMDA における安全管理対策業務の効率化につながることが期待されるとしており、引き続き、今後数年での実用化を目指して開発を続けるとしている。

※1 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 第 23 回報告書 2020 年 1 月~3 月)より。PMDAにおける令和2年度第2回医薬品安全使用対策検討では、令和元年5月1日~令和元年12月 31 日の間に報告された薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業からの 97,707 事例のうち、PMDA において評価対象とされた抽出事例は 2,416 事例あり、このうち 6.7%が医薬品の使用方法及び名称・包装等の観点から重篤な健康被害を伴いうる可能性がある「評価 1」 及び「評価 2」と評価された。

※2 評価の具体的内容
評価1 医薬品の安全使用に関する製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例
評価2 製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例
評価3 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 ヒューマンエラー、ヒューマンファクター)
評価4 製造販売業者等によるモノの対策は困難と考えられた事例 副作用、情報不足等)
評価5 その他 処方箋等からの保険者番号等の転記ミスや調剤報酬の算定誤り等)