中外製薬は、自社開発の抗体創薬支援AIが既存抗体より約1800倍結合強度の高い抗体のアミノ酸配列を提案したとし、その成果が英科学誌「Scientific Reports」に掲載されたと発表した。同社では今回の成果は、AIをはじめとする先端技術が創薬イノベーションの可能性を大きく拓くことを示すものだとしている。
キヌレニンの新規抗体をAIで探索
今回の研究成果は、同社が開発した人工知能(AI)を活用する抗体創薬支援技術「MALEXA-LI」に関するもの。リード抗体に適した配列を見つけるAI技術で、同社のこれまでの研究ノウハウから蓄積した抗体ライブラリーから、次世代シークエンサーを用いて遺伝子配列情報を取得、解析したデータを訓練データとする機械学習モデルだという。
研究では、標的抗原に結合する抗体配列を選抜するため、深層学習のアルゴリズムの一つ「LSTM(Long Short-Term Memory、長・短期記憶)」に基づく配列生成法を開発。キヌレニンに対する高い結合活性を有する抗体配列を探索した。その結果、MALEXA-LIが提案するアミノ酸配列が、既存の抗体と比較して標的抗原に対し1800倍以上結合強度の高い抗体であることが立証された。論文では開発した手法は他の様々な課題に展開できるとしている。