LINEヘルスケア、「LINEドクター」参加医師に事実と異なる説明「データはすべて国内で保存」

 LINEの子会社でヘルスケア事業を展開するLINEヘルスケアが、オンライン診療サービス「LINEドクター」の参加医師に、データの保存先について事実と異なる説明をしていたことが分かった。厚生労働省が定めるオンライン診療指針に沿わず、医師に対し不誠実な説明を行なっていた可能性がある。

サービス参加医療機関の医師に「データはすべて国内保存」と明言

 当メディア既報の通り、LINEは23日の記者会見のなかで、オンライン診療サービス「LINEドクター」内で送信された画像、具体的には患者の保険証画像などが韓国のデータセンターに保存されていることを認めた。近日中に国内移転を進め完了させるとの立場だが、この説明に対し、オンライン診療の担い手である医療機関からこれまでの説明と違うとの困惑が広がっている。

 現在「LINEドクター」は地域限定、少数の参加医療機関のみの先行サービスというかたちで運用されているが、その参加医療機関のひとつ(全体のリストはこちら)を運営する医療法人社団法山会理事長で医師の山下巌氏は、このサービスの開発時にLINEヘルスケア側から「データは全て国内サーバーに置く」ことを明言されていたという。この発言は自身が管理者を務めるオンライン診療の関係者が集まるSNSのグループ上でなされ、多くの関係者が反応している。

 Med IT Techの取材に同氏は「私としてはデータを国外で管理すること自体を一概に否定しているわけではありません」としつつも、「一般的に懸念されている噂を確認したところ、いとも簡単に大丈夫とおっしゃられた事について、残念としか言いようがないと感じています」と、当初の説明とまったく異なっていたことにかなり困惑している心情を明かした。さらに「LINEドクターに関しては、Drの登録にはかなり厳しいルールを設けていますし、オンライン診療の健全な普及のために国の基準を上回る厳格さで運用するものと推察していたのでそこも残念」とも述べた。

 山下氏がこうした発言をするのはもちろん理由がある。厚生労働省が定めているオンライン診療の指針には医師、通信事業者、患者それぞれが行うべき対策や留意すべき事項がまとめられているが、情報セキュリティに関しては、事業者の提供するシステムが指針の要件を満たしているか、医師が確認することと明記されている。そして事業者側にも「医師に対し医師が負う情報漏洩・不正アクセス等のセキュリティリスクを明確に説明すること」「システム全般のセキュリティリスクに対して責任を負うこと」を求めている。山下氏はLINEドクターを導入検討する際、指針が求めるこうした確認行為を当然のこととして行ったわけだが、LINEヘルスケア側はそれに対し事実と異なる説明をしたということになる。

 Med IT Techでは、LINEヘルスケア社の親会社であるLINEの広報部門に質問を送付し、事実確認とそうした説明を行った理由について回答を求めている。回答あり次第続報する。