【コラム】その検索は「死の商人」を召喚する

COLUMNがん,オプジーボ,免疫療法,医療ICT,医療IT,改正医療法

 10月1日夕刻(日本時間)に発表された、京都大高等研究院の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授らの2018年ノーベル医学生理学賞受賞のニュース。がん治療の「第4の道」を切り拓いたとされるこの大きな業績は、日本中から大きな賞賛を浴びています。このことについて、ネットメディアを運営する人間としてお伝えしなければならないことがあるので、拙筆を取らせていただきます。

https://mainichi.jp/articles/20181002/k00/00m/040/030000c

インターネットと医療の世界でいま、起きていること

もちろん、いまやテレビと同程度の影響を持つと言われるインターネットメディアでも、このニュースは各方面に大きな影響を与えています。受賞が発表された10月1日、2日の検索ワードのトレンドは、受賞対象となった研究成果により開発された免疫チェックポイント阻害薬の名前(一般名ニボルマブ、薬剤名「オプジーボ」)や、ノーベル賞、京都大学といった関連キーワードが上位にランキングされています。

https://trends.google.co.jp/trends/trendingsearches/daily?geo=JP

大きなニュースにともなって関連するワードでのインターネット検索が増えることは、いまはむしろ当然のことなので、このこと自体は驚くべきことでも取り上げるべきことでもありません。しかし、医療とITに関する専門のWebメディアを運営する私としては、どうしてもお伝えしなければならないことがあります。

それは、これらのワードで検索した結果出てくる検索結果ページの現状、特に「免疫療法」で検索した場合の内容が、非常に残念なことですが虚偽と誤解を与えかねない情報で溢れていることです。これはGoogleでもYahoo!JapanでもBingでも、ほぼ同じです。

理由は、画面上位に「広告」が並んでいるからです。生きたいと必死に手段を模索している患者や家族の方々に、あろうことか未だに詐欺的な広告文言が臆面もなく並んでいます。

改正医療法が施行され、当メディアでもお伝えしたように告発窓口が常設されていますが、基本的に正しい情報のみが出てくるわけではありません。批判や是正は、すべていかがわしい情報が出てからの対症療法です。

大事なことなので、繰り返させてください。
その言葉で出てくる情報のほとんどは、大変残念ながら嘘と悪意で満ち溢れています。
そこにある言葉は、人の命を金のために弄ぶ「死の商人」の甘言です。

そんな状況の中、いまこの時点で私が言えることは「免疫療法」で検索するのは即座にやめ、適切な専門家(医師)に聞いてほしいということです。対面で、少なくとも電話で、名前を出してしっかりと話をしてくれる人に。

ネットメディアの人間がこのようなことを言うのは敗北宣言みたいなものですが、それが厳然たる事実です。

当メディア、あるいは運営会社はこうした現状を、直接関係はないですが当事者として重く受け止め、改善できる提案をしたいと考えています。そのための提言ができるよう、水面下で取材・調査を続けています。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

 

関連記事