アシックスとカシオ計算機が共同で、利用者の運動データを独自に分析し、より「質の高い」ウォーキングをアドバイスする無料アプリを公開した。分析アルゴリズムには「ファストウォーキング」の効果について、アシックスが立命館大学と共同研究した知見が取り入れられており、カシオの専用時計も活用すれば心拍も手元で確認できる。
「時速7.5km以上のウォーキングは、同速度でのランニングより安全で負荷が高い」という研究結果
今回両者が発表したアプリ「Walkmetrix」は、アシックスが立命館大学スポーツ健康科学部の後藤一成教授と共同研究した「ファストウォーキング」の2つの研究成果がベースとなっている。「ファストウォーキング」とは、時速5〜7kmを目安に普段より速く歩くことを意識したウォーキングのことで、同社が長年提唱している指標でもある。
1つ目の研究では、20代の男女36人の被験者を対象に、ウォーキングおよびランニング時の速度変化におけるエネルギー消費量や心拍数を計測。本研究ではトレッドミルを使用し、ウォーキングは時速3kmから歩き続けることができる最高速度まで、ランニングは時速5kmからこのウォーキング条件を上回る速度まで約14分間継続して行った。その結果、時速7.5km以上のファストウォーキングは、同一速度でのランニング時のエネルギー消費量を上回ること、また時速8kmのファストウォーキングでのエネルギー消費量は、時速9.3kmでのランニングエネルギーと同程度であることが認められた。心拍数においても、時速7km以上のファストウォーキングは、同一速度でのランニングの心拍数を上回り、心肺機能の向上が期待できることが分かった。
2つ目の研究では、20代の男性8人の被験者を対象に、ファストウォーキングおよびランニング時における地面反力(身体への衝撃)と筋活動量を計測した。地面反力を測定できるフォースプレートを内蔵した特殊なトレッドミルを使用し、通常歩行(以下SW、時速4.1km±0.1km)、ファストウォーキング(以下FW、時速7.7km±0.2km)、ランニング(以下Run、時速7.7km±0.2km)の順にそれぞれ4分間行った(各測定の合間に3分間の休憩を挟んだ)。
その結果、ファストウォーキングは同速度のランニングに対し、上下方向への地面反力の最大値および平均値が低いこと、特に、ファストウォーキングにおける地面反力の最大値は、ランニングに対して68.2%程度にまで軽減されていたことが認められた。筋活動に関しては、大腿部や臀部の筋活動の総量においてファストウォーキングと同一速度でのランニングとの間で有意差はなかったが、大腿二頭筋の筋肉において通常歩行との間で有意差が認められた。
同社はこの2つの研究結果から、時速7.5km以上のファストウォーキングは、同一速度のランニングと同等以上のエネルギー消費が期待でき、かつ身体への衝撃が少ない運動方法であると評価。この研究で得られた知見をもとに、カシオ計算機と共同で「Walkmetrix」を開発、公開した。
知見をベースに、ウォーキングの「質」を評価するアプリ「Walkmetrix」を開発
今回公開した『Walkmetrix』では、上記研究で効果が一定程度裏付けられた「ファストウォーキング」理論に基づき、十分に息が上がるペースでのウォーキング「ファストウォーク」、通常のウォーキングとファストウォークを交互に行う「インターバルウォーク」などを取り入れた3種類のウォーキングプログラム(体力向上/ダイエット/リフレッシュ)を用意。週ごとのメニューに沿って効率よくウォーキングを行い、健康的な身体づくりを続けることが可能となるという。アプリには歩数や距離などの量だけでなく、歩行スピードや歩幅などといった「歩きの質」も考慮した計測評価・プログラムが用意されており、質の高いウォーキングの継続をサポートする。またこのアプリと、カシオ計算機が発売する「G-SHOCK」新機種と連携させれば、心拍データを基に「持久力スコア」も表示できる。アプリはiOS、Android向けにすでに公開されており、ダウンロードは無料。