bitBiomeが7億円の資金調達、「疾患と微生物の関連性」解析の自社研究および医科歯科大との共同研究を開始

微⽣物のシングルセルゲノム解析が可能な独自技術を持つベンチャー企業「bitBiome(ビットバイオーム)」は2020年8月24日、複数企業を引受先とした第三者割当増資により総額7億円の資金調達を実施し、さらに「疾患と微生物の関連性」を解析する自社研究と、東京医科歯科大との共同研究を開始すると発表した。

「世界初」のシングルセルゲノム解析技術を持つ早稲田大学発ベンチャー企業

bitBiome社は2018年11月創業の早稲田大学発ベンチャー企業。同社が所有するゲノム解析技術「bit-MAP®」は、微生物のゲノム情報を、1つの細胞からでも高精度に解読する世界唯一のゲノム解析技術とされており、従来のマイクロバイオーム研究で必要とされてきた単離・培養、シーケンスデータの計算処理を不要とすることで高速かつ網羅的にゲノム情報を獲得できるとしている。現在1ヵ月あたりのシングルセル最大解析可能数を20,000ゲノム超まで高め、国際特許を8件出願するなど経営基盤を強化している。同社は、今回の資金調達でさらなる成長のため、自社研究や米国進出などさらに積極的な事業展開を行うという。

その一環として、まずは自社研究としてがん、腸内疾患、自己免疫疾患、神経精神疾患などを含む20を超える疾患について参加者の便および唾液サンプルを取得し、疾患と微生物、特に腸内細菌および口腔内細菌との関連性を明らかにする大規模研究を開始する。疾患ごとに、医薬品研究開発・新規バイオマーカー探索を⽬指したパートナリング/共同研究、解析データの共有および独占販売などを検討する。さらに東京医科歯科大学と歯周病に関連する口腔内細菌の網羅的解析を行う共同研究を実施する。具体的には、同大学歯学部附属病院 歯周病外来 岩田 隆紀教授、須藤 毅顕特任助教らと、歯周病病変部におけるプラーク内細菌叢を、シングルセルゲノム解析およびメタゲノム解析にて解明を試みる。

歯周病菌は、慢性炎症による歯周組織の破壊だけでなく、さまざまな全身疾患のリスクを高めることが報告されている。口腔内細菌の代表菌種としてはP.gingivalisP.g菌をはじめとしたRed Complexと呼ばれる細菌種が歯周病罹患部位に多く見られることが知られており、細菌株間で病原性の違いや遺伝子の変異などがこれまで着目されてきた。しかし、細菌の全ゲノム情報を迅速・高精度・網羅的に分析することがこれまで困難で、病態と関連した菌株の特性などの詳細は明らかにできていなかった。

医科歯科大学との共同研究では、bit-MAP®を利用することでP.g菌を含むプラーク内細菌叢の網羅的なシングルセルゲノム解析を初めて実現し、数百個を超える細菌ゲノムの解析を行う。臨床症状に関連する新規の菌株や同一種内の変異を特定し、口腔内細菌叢の診断バイオマーカーや新たな治療法の開発に繋げることを目指す。