スマートフォンに取り付ける「眼科医療機器」で白内障診断可能 日本の医療ベンチャーの論文が論文誌掲載

日本の医療ベンチャー企業 OUI Inc.(ウイインク)は、iPhone に取り付けて眼科診察を可能にする自社のアタッチメント型医療機器「Smart Eye Camera(SEC)」を使用した白内障の診断に関する臨床論文が、査読付き論文誌に掲載されたと発表した。論文では既存機器との比較実験を行い、同等であるとの検証結果がまとめられており、同社では同社製品による白内障の診断において、既存の細隙灯顕微鏡と同等の信頼性が証明されたとしている。

スマートフォンのカメラに取り付け、眼科診療に活用可能な「SEC」

2016年設立の同社は、慶應義塾大学医学部の眼科専門医3人が設立した医療ベンチャー。国際医療活動を行う中で、特に途上国における医療機器不足を痛感し、スマートフォンを活用した眼科医療機器の開発を着想。iPhoneに対応したアタッチメントとして「Smart Eye Camera(SEC)」を開発した。既存の細隙灯顕微鏡と同様に眼瞼・角結膜・前房・虹彩・水晶体・硝子体の観察、すなわち「前眼部検査」が可能で、白内障などの眼科疾患を診断できるとしている。

既存機器との比較評価で相関係数両眼0.871、再現率はk係数で0.807

同社は以前SECの能力について動物実験で明らかにしているが、今回はヒトの眼における既存機器との能力比較試験を行った。具体的には62症例(両目で124眼)に対し、既存の細隙灯顕微鏡とSECの両方で検査を実施。初めに眼科医が患者の眼を固定式細隙灯顕微鏡で確認し、次に非眼科医がSECで撮影した画像を眼科医が評価する方法で、核性白内障の有無とその重症度の診断における相関性を調べた。

論文より

結果、両眼平均で相関係数0.871(p値<0.0001)の数値が得られた。また白内障の重症度の分類においても、既存機器による診断との再現率がk係数で0.807となり、SECで行なった診断は従来の固定式細隙灯顕微鏡と同様に信頼できることが示唆されたという。

同社では引き続き研究を続けるとともに、SECを国内外に広めることで、2025年までに世界の失明を50%減らすことを目指していくとしている。

論文リンク:Evaluation of Nuclear Cataract with Smartphone-Attachable Slit-Lamp Device(Diagnostics 10: 576, 2020)