【編集部コラム】LINEヘルスケアに引き続き求められるコンプライアンス オンライン診療にはどう対応する?

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9月10日、LINEヘルスケアは現在展開している遠隔健康医療相談サービス「LINEヘルスケア」に続き、オンライン診療サービス「LINEドクター」を11月に開始すると発表しました。同時に、登録医師による不適切対応事象が発生した「LINEヘルスケア」サービスの運用方針を改め、改善に取り組んでいる旨、8月20日の発表に続けて改めて表明しています。既報のとおり、当編集部は2回にわたり当該医師個人の問題だけではなくサービスとして複数の問題があると指摘してきました。改めて同社が取り組みを表明したことにあわせ、再度現状を報告するとともに、「LINEドクター」の適切な運営のために求められる課題についてまとめます。

LINEヘルスケアが改めて発表した対応方針を振り返る

2020年9月10日開催のLINE DAY 2020より

同社が8月20日に発表し、9月10日にも表明した方針はこのようなものですが、最初の発表時からすでに3週間が経過しており、相当程度取り組みが進んでいると推定するのは自然なことです。前々回前回と当編集部が指摘した事象が改善されていることを期待し、今回も現状を確認してみました。

しかしまたもや残念なことですが、現時点でも(2020年9月11日16時)改善されているとは言い難い状態です。

複数の医師の疑念のあるプロフィール、いまだ改善されず。表示アルゴリズムも同様か

前回のコラムでは、医師の情報の信頼性に疑念がある典型的な例として「学歴がまともに書かれておらず、内科、小児科、皮膚科、耳鼻科、整形外科と幅広く相談できると書いてあり、豊富な経験を持つ総合診療医かと思わせながらも、経験年数4年のまだ研修医」が存在すると指摘しました。多くの登録医師の多数とは言えない数ではあるものの、複数こうした医師がみられることも再三指摘しています。

改めてこのコラムの執筆時(2020年9月11日16時前後)にLINEヘルスケアの画面をチェックしたところ、前回指摘した医師のプロフィールはまったく変わっていませんでした。また、前回認識はしていましたが、取り上げなかった複数の医師の情報についても、ほとんど変わっていないことを確認しました。今回は複数の医師についてキャプチャで供覧させていただきます。

また同様に指摘した「プロフィールの怪しい医師に限っておすすめ医師の上位に表示される」点についても変わらずでした。高頻度で、全ての診療科においてキャプチャで示した医師が上位に表示されます。いずれも相談実績数が多く、この数が上位表示の基準の一つであることは強く推定されます。

これらの医師は、経験年数の記述が本当ならばどちらも研修医です。研修医の方々全員の能力に疑念がある、ということを言いたいわけではありませんが、研修医というのは制度上、研修に専念することが求められ、研修機関以外で診療行為をすることは禁止されています(医師法第16条の3)。このサービスは診療ではありませんが、サービス自体の訴求ポイントが「医師が相談を受ける」ことにあることを素直に受け止めれば、経験の浅い医師を積極的におすすめに表示するというのはいかがなものかと言わざるを得ません。この点は前回も指摘しているところです。

今回の記事掲載にあたって、LINE PR室を通して見解を求めたところ、以下の回答でした。全文をそのまま掲載します。

ご対応いただいている医師に対して、下記の修正依頼を打診しており現在反映の有無をチェック対応中でございます。

1:本サービスにて対応可能な診療科(内科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科)以外の相談を受諾可能とする内容や、相談者が誤認するような情報の掲載は削除・修正
 NG例:精神科のお悩みや相談も受付け可能です
2:相談者の混乱を防止する観点から「学会認定専門医資格」欄には厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定する専門医資格のみを記載し、いずれも該当なしの場合は「なし」と入力

おすすめ医師表示についての詳細の仕様に関しましては、大変恐縮でございますが公開しておりません。
つまり、LINEヘルスケアはあくまで医師側に情報修正を求め、その有無をチェックしているだけということのようです。サービスの質を担保するための積極的な努力がなされているのか、自社がみずからモニタリングを強化すると発表しているにも関わらず、まったく言及がありませんでした。

既報のとおり、同社は10日、オンライン診療サービスの開始を発表しました。このサービスの運営ハードルは、相談サービスのそれとはまったく難易度が違います。医療の質を守り患者さんを守るため、実際に多くの法律/ガイドラインで規制がされており、実際にそれを遵守しなければ場合によっては懲罰が与えられます。同社がその重大さと責任を十分に感じ、サービスの設計をしていただくことを強く求めたいと思います。

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Posted by Shigeru Kawada