「3Dプリント可能な人工呼吸器」プロジェクト、国際アートコンペでグランプリ獲得

 当メディアでもお伝えし注目された「3Dプリント可能な人工呼吸器」プロジェクトが、国内アーティストとのコラボレーションでアート作品となり、出品した国際アートコンペティション「KYOTO STEAM 2022」でグランプリを受賞した。作品展示されている京都市京セラ美術館での展示スペースのもようなどをお届けする。

アート作品「とほく おもほゆ」としてグランプリ受賞

作品名の「とほく おもほゆ」は、”遠くのことを自然と思わせる”という意味の古語である。以前の記事でプロジェクトを率いる石北直之医師から、作品のために改めて協力が求められたが(既報)、その求めに応じたボランティアのサンプルを使い、アーティスト三木麻郁の想像力によって、彩りを加えるだけでなく「音を奏でる」という、視覚と聴覚両方に働きかけるアート作品が誕生した。

 展示空間には造形サンプルが壁面に並ぶとともに、人工呼吸器と笛が組み合わされた作品18点が置かれている。それぞれに空気が送られると、別々の音階で音を奏でるようになっており、互いが互いに呼びかけるように音を奏でてハーモニーを響かせ、18個すべての作品が音を奏でたあとに沈黙する。「呼吸」という生命にとって根元的な営みを捉え直し、『呼吸の音色』として表現した試みだ。

アーティスト三木麻郁氏(左)と「COVIDVENTILATOR」プロジェクトを率いる石北直之医師

 この作品を含む「KYOTO STEAM 2022 国際アートコンペティション」の出品作品は、2022年2月13日まで、京都市京セラ美術館 新館 東山キューブにて展示中だ。受賞を受け、石北医師からコメントをいただいたので掲載したい。

作品で使用した人工呼吸器は、藤田隆行氏(コシェルラボ)と共に10年かけてデザインを追求し完成させた機器であります。

コラボ作品「とほく おもほゆ」は、人工呼吸器から音を奏でたいというコンセプトから生まれました。
呼吸器に接続したパイプの中に、使われていないアコーディオンのリードを組み込んで、空気を流して人工呼吸器を動かすと同時に音を出しています。

この作品をきっかけに発明したパイプスタンドは、医療や介護、消防用途など、将来様々な分野で役立つ可能性があります。作品製作を通じ「アート×サイエンス・テクノロジー」を体現出来ました事は大変喜ばしい限りです。

コロナ禍で様々な制約がある中、国際アートコンペティションで発表の機会を与えて下さり、本当にありがとうございました。一日も早く臨床現場で役立てられるよう精進して参ります。

This ventilator had been pursued and completed over 10 years with Mr. Takayuki Fujita (Coshell Lab). “To’oku Omofuyu” was born from the concept of wanting to play sound from a ventilator. An unused accordion reed is installed in a pipe connected to the ventilator to allow air to flow to work the ventilator and at the same time make a sound. The pipe stand was invented with this work may be useful in a wide range of fields such as medical treatment, long-term care, and firefighting applications. I am very pleased to be able to embody “Art x Science technology” through the production of works. Thank you very much for giving us the opportunity to join at the International Art Competition, despite the various restrictions of the Corona. We will do our best to make it useful in clinical practice as soon as possible.

なお今回の現地レポートには、石北医師を支援するNASA SpaceAppsOsaka founderの鳥山美由紀氏の多大なご協力をいただきました。ありがとうございます。

外部リンク:KYOTO STEAM2022  国際アートコンペティション | 京都市京セラ美術館