がん患者の8人に1人が、新型コロナの院内感染を危惧し受療内容を変更、または一部をキャンセルしている実態が明らかになった。がん患者の雇用や生活について調査・支援する一般社団法人がアンケート調査し結果をまとめたもので、このほかにも、非正規雇用の患者がテレワークへなかなか移行できていないことや、収入減少に見舞われていたことも明らかになっている。
「情報の非対称性」が変更の原因か
このほど調査結果を公表したのは、がん患者の雇用や生活について調査研究・支援などを行う一般社団法人「CSRプロジェクト」。10月初旬、診断時に収入をともなう仕事をしていたがん患者310人(平均年齢57.1歳)を対象にWebアンケートで調査した。
その結果によると、患者の8人に1人が実施中の受療内容を変更しており、とくに薬物療法など何らかの治療を受けているグループでは4人に1人の患者が受療内容を変更していることが分かった。その理由として8割弱が「院内感染の不安」をあげており、また変更の決定者が医療機関に次いで自分自身となっている。アンケートではその決定要因となり得る予防対策の情報源について聞いたところ、テレビやラジオ、インターネットが公的機関の情報より上位になっていることも分かった。
アンケートを実施した同団体ではこの結果について、変更した人の中には自己判断で受療を変更した患者もおり重症化などが懸念される一方、自己判断で受療内容を変更した人の主な情報源はテレビやラジオ、インターネットなどが多く、医療機関や学会など確かな情報源へのアクセスが低いのが特徴的だとしており、疾患を有した患者に対しては確かな情報へのアクセス動線をつなぐことが大切との見解を出している。
正規雇用よりも非正規雇用がテレワークへの切替え進まず
アンケートではがん患者の緊急事態宣言下での働き方、また前後での就労時間・月収の変化についても調査している。その結果によれば、緊急事態宣言中テレワークが推奨されていたにもかかわらず、非正規雇用のがん患者が、正規雇用の患者と比べテレワークを認めてもらえず通常通り出勤していたことが明らかになった。収入面についても、特に正規雇用より非正規雇用の患者に収入減少が多く発生している。
同団体はこれについては、働き方に関する雇用形態による格差が生じているとし、また収入現象に関しても、女性就業者数が多い産業、雇用形態等が受けた打撃は極めて大きいと推測され、今後、乳がんなど女性に多いがん種での経済的な困窮を背景とした受療行動への影響が懸念されるとしている。
アンケート全体について、国立がん研究センター・がん対策情報センターの若尾文彦センター長は「不安を感じた際には自己判断せず医療者に相談することが重要で、その際、全体の状況は公的サイト、がん患者の一般的注意などは学会サイト、自分の治療に関することは医療機関に電話で確認することを基本にしてほしい」と述べている。