治療用アプリを展開するCureAppは3日、自治医科大学と共同で進めていた高血圧治療用アプリの第III相臨床試験について、学会発表が終了したのにともない結果を公表した。ガイドラインに沿った治療を行う対照群と比較して有意な降圧効果を示しており、同社は予定通り保険適用へのプロセスを進めるとしている。
主要評価項目で「−2.4 ㎜Hg」の有意差
今回結果が公表されたのは、自治医科大学と共同で進めた国内第III相の臨床試験で、治験調整医師は自治医科大付属病院 循環器内科の苅尾七臣教授。2019年12月に開始され、降圧薬による内服治療を受けていない本態性高血圧症の患者を対象に、「高血圧治療ガイドライン2019」に沿った生活習慣の修正のみを行う対照群と、ガイドラインに沿った生活習慣の修正に加え治療用アプリを使用する介入群の2群に分け比較検討を行なったもので、その結果、主要評価項目である「登録12週時時点における自由行動下血圧測定(ABPM)による24時間の収縮期血圧の平均値のベースラインからの変化量」において、介入群は対照群に比べ「−2.4 ㎜Hg」の有意な降圧効果を示したという。
さらに、登録後12週時点における起床時の家庭血圧SBP(収縮期血圧)においても「−4.3 ㎜Hg」の群間差(介入群の降圧効果自体は−10.6㎜Hg)が示され、この効果は登録後24週まで持続した。今回の治験調整医師である苅尾教授らの研究グループが2013年に発表した「日本人における家庭血圧の心血管予後推定能に関する研究」(J-HOP研究:Japan Morning Surge-Home Blood Pressure study)では、起床時の家庭収縮期血圧は脳卒中の独立した危険因子であるとされており、10 ㎜Hgの増加で脳卒中リスクが36%増加することを示している。CureAppではこれを根拠に、今回の治療用アプリによる起床時の家庭収縮期血圧の約10 ㎜Hgの低下は、心血管疾患を減少させる臨床的意義があるとしている。
同社は3日行った報道向けの発表の中で、今年5月にすでに薬事申請を行っており、2022年にも保険適用を目指すと表明した。なお今回の治験結果は、苅尾教授により2021年8月末に開催された欧州心臓病学会で発表され、また2021年8月29日付で「European Heart Journal」に論文として掲載された。