佐賀大とサイフューズ、20年春にもバイオ3Dプリンタ製人工血管の臨床試験へ

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 佐賀大学医学部附属再生医学研究センター、胸部・心臓血管外科とサイフューズは、 独自開発のバイオ3Dプリンタを用いて作製した「細胞製人工血管」をヒトへ移植する臨床研究を開始する。人工透析に必須である動静脈内シャントの材料としての可能性を検証するのが目的で、早ければ2020年4月にも開始する。

トラブルの少ない人工透析用シャントの確立を目指す

 臨床試験に取り組むのは、佐賀大学医学部附属再生医学研究センターの中山功一教授、同医学部胸部・心臓血管外科の伊藤学助教、及びバイオ3Dプリンタ「Regenova®」を製造販売するサイフューズ。同社は以前より中山教授の知見を活用し、佐賀大学、京都府立医科大学とともにバイオ3Dプリンタを用いた細胞塊の積層技術の研究開発に取り組んできた。現在骨軟骨、神経などの再生・製造に関する研究開発が進んでいるが、今回はそのうち、細胞のみから構成される小口径の細胞製人工血管(スキャフォールドフリー細胞製人工血管)が臨床試験段階に進むことになる。

スキャフォールドフリー細胞製人工血管

 現在、腎不全等により血液透析が必要となった場合、人工透析患者の96%以上がバスキュラーアクセス(血液透析を行う際の患者側のアクセスルート)の手段として、動静脈内シャントを使用していると言われている。この動静脈内シャントの作製には患者自身の自己血管を用いるか、合成繊維や樹脂製の人工血管が使用されているが、細菌感染や閉塞などの課題を抱えているのが現状だ。研究チームが開発する細胞製人工血管は、人工材料を用いず患者自身の細胞のみから作製する。そのため従来の人工材料による人工血管に比べ、抗感染性や抗血栓性における有用性、また、開存性の向上による患者の苦痛軽減が期待できるという。

 臨床試験では、被験者自身の鼠径部などから皮膚組織を約1cm × 3cm程度採取し、愛知県内企業の細胞培養専用のクリーンルームで数日間培養、その組織をベースにサイフューズのバイオ3Dプリンタを用いてチューブ状にプリントし、被験者へ移植。副作用がないか観察していく。記者会見に応じた中山教授は「想定しない事態も起こり得るので慎重に進めたい」と話した。

 

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