【Special】政府期待の「接触確認アプリ」、新型コロナ第2波を防げるか? 普及に必要なものとは
安倍首相が緊急事態宣言解除を報告した5月25日の会見で「接触確認アプリ」の利用を呼びかけたのは記憶に新しい。このアプリは6月中旬公開予定でまだ完成していないが、にも関わらず、ほぼ全てのメディアが報じるこの会見で、時間を割いて首相自ら呼びかけたのはなぜなのか。政府がこれほどまでに期待し、日本だけでなく多くの国で、機能や目的の差こそあれ導入・提唱されている取り組みについて、技術的側面や課題を含めてできるだけ総覧できるようまとめた。拙筆ながらご参考になれば幸いである。
保健所の機能を拡張する「デジタル・コンタクトトレーシング」
決定的な治療薬、またはワクチンのない感染症との戦いにおいて必ず必要なのは、保健当局による「検査での感染者特定」「その接触者の探索」「隔離と治療」である。世界共通のこのフローのうち、感染拡大を防ぐため絶対的に重要なのが接触者の探索であり、日本では自治体に設置されている「保健所」がこれを担う。保健所では、感染者と判明した人の行動履歴を事細かに聞き出し、一定程度濃厚に接触していた他人を特定することに注力する。これが英語で言うところの「コンタクトトレーシング=接触追跡」である。
しかしこの作業は、対象者の細かな行動履歴を紙や口頭で調査するといった極めて属人的、かつデリケートな情報を取り扱う作業だ。これまでの報道で明らかなように、対象者がプライバシーが明かされるのを恐れ回答を拒否するなどすれば、接触者を正しく追っていくことができない。またマンパワーが足りなくなれば調査が追いつかなくなる。こういった事例が多数積み重なれば適切な隔離ができず、ひいては感染爆発を防げなくなってしまう。この課題は世界共通であり、テクノロジーを導入し保健当局のコンタクトトレーシングを支援し、効率化および精緻化を図ろうとしたのが各国の動きなのだ。