スマホアプリによるうつ病の認知行動療法実現を 京都大、NCNPと田辺三菱製薬がライセンス契約

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京都大学、国立精神・神経医療研究センター (NCNP)、田辺三菱製薬の3者は、両研究機関が研究開発しているスマートフォンアプリによるうつ病の認知行動療法(CBT)を支援するアプリに関し、ライセンス契約を締結し実用化を目指すと発表した。すでに基礎的臨床研究は終わっており、アプリを活用した群の症状が、活用しなかった群と比べ優位に軽減されていることも確認済みだという。

2017年に164人のランダム化比較試験で効果を確認

うつ病に対する、アプリによる認知行動療法(CBT)の研究開発を行なっているのは、国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターの堀越勝センター長と京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康増進・行動学分野の古川壽亮教授。うつ病に対する認知行動療法は、先行研究では、単独で薬物療法とほぼ同等の効果を有するとともに、併用により各単独治療よりも有効性が増強することも示されており、普及が期待されている。

しかしこの療法は、標準で1セッション1時間×16 回の対面治療が必要となり、技能を持った人材と時間とを必要とする治療であるため十分普及しているとは言えない状況だという。一方、近年コンピュータやスマートフォンを用いた認知行動療法がオーストラリア、イギリス、オランダ、スウェーデンなどで行われており、スマートフォンを用いた認知行動療法でも、通常治療、あるはコンピュータ(インターネット)版と同等の効果があるとする研究もある。

こうした状況を鑑み、研究グループでは、認知行動療法をアプリで実現でき、娯楽性や視覚的な工夫をこらした独自のスマートフォンアプリ「こころアプリ」を開発。このアプリを用いたうつ病患者に対するランダム化比較試験を実施した。被験者164人を「抗うつ剤治療単独群」と「抗うつ薬とアプリの併用群」に分けて治療効果を比較したところ、単独群よりも患者の症状が軽減されていることを確認したという。研究グループに加え、ライセンス契約を締結する田辺三菱製薬は、このアプリを薬物療法と併用して使用することで抗うつ効果をさらに高めることが期待できるとし、うつ病の治療用アプリとして日本初の医療機器製造販売承認の取得を目指す。

田辺三菱製薬は契約により、医療機器としての製造販売承認を取得するために必要な臨床試験を実施。承認取得後の販売に係る日本国内の権利を独占的に保持することになる。同社としては2025年までの実用化を目指すとしている。

※ この成果は2017年に論文として公開されている。
外部リンク(論文):Smartphone Cognitive Behavioral Therapy as an Adjunct to Pharmacotherapy for Refractory Depression: Randomized Controlled Trial(PubMed)

 

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