中医協で遠隔診療の議論始まる、議論は平行線も指針づくりを了承

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2017年11月1日、中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)の定期会議が開催された。この日の議題は主に外来診療についてで、遠隔診療の診療報酬上の評価についても話し合われた。支払側と診療側委員の認識の差が改めて浮き彫りになったが、今後保険適用のための指針づくりを進めること自体は了承された。

 

委員内の認識の差は埋まらずも、厚労省の示した指針づくりは了承

厚労省はこの示した資料の中で、以下のような要綱で論点を示した。

○遠隔診療の適用については、患者の状態等を踏まえた個別判断が必要と考えられるため、一定程度の受診期間等を求める必要があるのではないか

○医療の質を確保する観点から、例えば事前の治療計画の作成・患者同意の取得等を求 める必要があるのではないか

○診療報酬上の評価には、上記を要件に求めるべきではないか

同資料では、福岡市と福岡市医師会らが進めている「ICTを活用したかかりつけ医強化事業」(既報)の経過報告と、厚労省研究班が実施したCPAP療法における、対面診察の間隔を延長する実証研究の検証結果も示された。さらに厚労省として初めて、診療報酬上の評価について具体的な要件を示し、委員同士の議論も活発になった。

まず診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、これら資料を踏まえた上でも「エビデンスの確認を省略したまま進めることは認められない」とし、さらに「遠隔診療により外来受診頻度を少なくすることや、患者の利便性ということで、積極的に活用することは認められない」と発言。厚労省研究班の検証結果に対しても「3カ月ごとに対面診療し状態が落ち着いているから治療が同じ、というのは結果論。本来は月1回の対面診察が基本」と従来の慎重論を繰り返した。

これに対し支払側である幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「診療側からのネガティブな発言は残念だ。ICTの進展は医療を発展させる」と反論し、かかりつけ医が行うことを要件として慎重に進めることを提言した。ただこれらの議論においても、厚労省が最初に示した要件自体を疑問視する発言はなく、また遠隔診療やICTの活用自体を否定する議論にもならなかったため、この要件を具体的に記載する指針づくりは了承された。

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