2017年3月24日、佐賀県はドローンを活用した初めての災害活動訓練を佐賀県下の中木庭ダムで行なった。訓練には地元の広域圏組合の消防隊のほか、県と災害時の活動で協定を結んでいる事業会社3社が参加(既報)。実践的な想定の中で随所にドローンが活躍し、新しい災害時支援の姿を具体的に提示するものとなった。
ドローンが状況確認、医薬品配送などに活躍
24日は、2つの災害想定に対応するオペレーションを訓練。このオペレーションの中にドローンをメインプレイヤーのひとつとして組み入れ、有用度を実践的に検証した。
想定1:土砂崩れで橋が使えなくなり道路寸断、民家が孤立。支援に向かう
①状況確認
まずは観測用のドローンを飛翔させ、撮影。ドローンには災害無線のスピーカーが取り付けられており、孤立した民家の住民にこれから支援に入ること、今後行なうことを告げ、帰還する。
②3Dマップで現場分析
帰還したドローンの撮影データを、指揮本部で3Dデータ化。立体的な情報を得ることで、指揮本部での支援救助プランの策定の精度を上げる。
③無線トランシーバーをドローンで配送
無線トランシーバーを取り付けたドローンを派遣、孤立者に渡す。これでリアルタイムに指揮本部と住民がつながり意志疎通できるようになる。状況を聞き取り、欲しいものなど要望を受ける。
④医薬品など支援物資をドローンで配送
要望に基づき医薬品などケースに入れ、ドローンで配送。ドローンは自動でケースを置き、自律で帰還する。
(撮影:Med IT Tech)
想定2:対岸に傷病者発見。まずは海上ボートで隊員が状態確認、善後策を検討する
①状況確認
消防隊員が、海上ボートで対岸の傷病者の確認へ向かう。その結果頸椎損傷の疑いありとされ、ボートでの輸送ではなく、ロープを渡してのストレッチャー搬送と判断する。
②ドローンでリードロープを対岸へ
クレーンから対岸へロープを渡すためのリードロープを、ドローンが対岸へ運ぶ。リードロープは対岸の消防隊員に届き、この後クレーンからのロープを誘導、ストレッチャーの搬送が無事成功した。
精緻な想定の訓練においてすべて成功
訓練を実際に観覧して感じたのは、実際の災害状況を精緻に組込んだユースケースと、それに対応する複雑なオペレーションに見事に応えたドローンの可能性だ。特に出色だったのは、災害現場の状況確認と被災者とのコミュニケーションのために、まずは無線を配送するオペレーションだった。実はこれを提案したのは、訓練を監修したEDACの副理事長、円城寺氏だったという。佐賀県職員としてドクターヘリ導入に関わった時の経験が活きた、と語る。
またこのオペレーションが実現できたのは、今回の訓練の重要ポイントである、ドローンによる物資配送のレベルが非常に高かったからだ。今回使用されたドローンは佐賀県内で事業を展開する島内エンジニア、富士建が測量用などで活用する独自機種。ケースをがっちりホールドしたまま飛翔し、目的地に着地後、自律でケースをリリースできていた。なお搬送物資は4kgまでを想定しているとのこと。
佐賀県では今回を皮切りに、各地の消防訓練へドローンを活用したメニューを組み入れていきたいという。いよいよ、ドローンの災害支援活動への社会実装が、ここ佐賀から始まったといえるだろう。