健診データからパーキンソン病の「発症前の生体変化の兆候」を発見 名古屋大
名古屋大学の研究グループは、難治神経変性疾患のひとつであるパーキンソン病を対象とした臨床研究において、患者が過去に受診した健康診断の結果を解析することで、運動症状の発現前に血圧、ヘマトクリット、血清コレステロールの値が変化することを発見したと発表した。将来的にパーキンソン病の早期診断運動症状の発現前の早期発見が可能になるとしている。
「血圧」「ヘマトクリット値」「血清コレステロール値」がバイオマーカーとなる可能性
研究成果を発表したのは、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学の勝野雅央教授、横井克典(筆頭研究者、大学院生)の研究グループ。パーキンソン病はドーパミン神経の細胞死を原因とする進行性の神経変性疾患であり、手のふるえや動作緩慢などの運動症状が主症状。先行研究では運動症状の発現時にはすでに50%以上のドーパミン神経が死滅していることがわかっており、早期診断・治療が重要と考えられるようになっている。
勝野教授らの研究チームは、久美愛厚生病院(岐阜県高山市)と名古屋大学医学部付属病院(愛知県名古屋市)に通院中の45人のパーキンソン病患者が運動症状発現前から受けていた健康診断結果の経時的変化を解析。同時に、だいどうクリニック(愛知県名古屋市)の健康診断を受診した120人の健康な方のデータについても経時的変化を解析し比較検証した。
その結果、女性のパーキンソン病患者では運動症状発現前に血圧が上昇しており、発症が近づくにつれ血圧が低下してくることが分かった。男性のパーキンソン病患者では、ヘマトクリット値、総コレステロール、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-コレステロール)が運動症状発現前から低下してくることが明らかになった。この結果から研究グループは、健康診断の項目のうち「血圧」「ヘマトクリット値」「血清コレステロール値」がパーキンソン病の運動症状発現前のバイオマーカーとなる可能性が示唆されたとしている。さらにこれらの結果は、パーキンソン病の運動症状発現前に、すでに自律神経機能や貧血、代謝などに関する生体変化が始まっていることを示していると指摘した。なおこの成果は論文として英国科学雑誌「Scientific Reports」(2020年11月25日付の電子版)に掲載された。