診断困難な種類の悪性リンパ腫、リキッドバイオプシーで高感度に検出成功 藤田医科大ら

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藤田医科大学らの研究グループが、血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)患者の血液中に存在するリンパ腫細胞由来のゲノムの解析を行うことで、遺伝子異常を高感度に検出することに成功したと発表した。「リキッドバイオプシー」が、IVLBCLの診断を補助する手段として臨床応用できる可能性を示したとしている。

治療経過にあわせ、腫細胞由来DNAの濃度変化が起きることも確認

 研究成果を発表したのは、藤田医科大学医学部血液内科学の冨田章裕教授、名古屋大学医学部附属病院血液内科の島田和之講師、同大大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学の清井仁教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学の小川誠司教授、吉田健一助教らの研究グループ。

 悪性リンパ腫は血液がんの中で最も高頻度に生じる病気で、多彩な病型を持つことで知られる。その中でもIVLBCLはまれな悪性リンパ腫の一病型で、一般的な悪性リンパ腫とは異なりリンパ節の腫れ(腫瘤)を形成せず、リンパ腫細胞が全身の細い血管の中で増えることを特徴としており、通常の生検では診断しづらい課題がある。現状では皮膚や骨髄から組織をランダムに採取し、採取組織の中からリンパ腫細胞を見つけることにより診断しているが、採取した組織の中から十分なリンパ腫細胞を得られないことが、病気の原因を調べる研究の妨げとなっている。

 研究グループでは、IVLBCL患者の血漿中に、リンパ腫細胞から流出したゲノム(末梢血無細胞遊離DNA: cfDNA)が、健康な人および一般的な悪性リンパ腫の患者よりも高濃度で存在することを確認し、cfDNAの詳細なゲノム解析(網羅的遺伝子解析)を行った。また抗がん剤治療を実施したIVLBCL患者から、診療の経過とともにcfDNAを採取しその濃度を測定したところ、病状に合わせてcfDNA濃度が変化することも発見。この濃度の変動は、悪性リンパ腫の病状を反映する指標の一つとして知られる血清LDH値と同様の変化を示すことも確認した。

 研究チームではIVLBCLの診断および研究のために、「リキッドバイオプシー」が特に有用であることが示されたとしており、今後、IVLBCL の診断を補助する手段として臨床応用されることが期待されるとしている。本研究成果は、米国の学術ジャーナル「Blood」のオンライン版に公開された。

外部リンク(論文):Frequent Genetic Alterations in Immune Checkpoint-Related Genes in Intravascular Large B-Cell Lymphoma(Blood)

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Posted by Shigeru Kawada