電気刺激と専用設計された「ゲーム」の組み合わせで、ストレス・不安を和らげる非薬物療法確立の可能性を示す研究が学術誌に掲載された。研究を行なった企業は、今後も共同でメンタルヘルス分野の様々な療法開発に取り組んでいくという。
「tDCS」による電気刺激と「ABMT」アプリによるトレーニングの組み合わせ
研究成果を米学術誌「Frontiers in Neuroergonomics」に発表したのは、デジタル療法を開発する米ベンチャーWise Therapeutics社と、ウェアラブル経頭蓋脳刺激装置(tDCS※1)の大手メーカーである米Soterix Medical社。Wise社は「attention bias modification training(注意バイアス修正治療)=ABMT」と呼ばれる認知行動療法の一種を、コンピュータベースの手段で実現しようと研究開発を行なっている企業だ。
今回の取り組みは、メンタルヘルス上の主要な問題となる不安症状へのアプローチとして、tDCSとABMTを組み合わせた非薬物療法の効果について研究したもの。軽度から中程度の不安症状があると自己申告している成人38人にtDCSを装着してもらい、ABMTができる専用開発されたアプリを実行してもらっている間に、ランダムにtDCSによる刺激を行なって、刺激群と非刺激群のそれぞれの不安症状の軽減度合いを検証した。結果、自己申告による不安症状が41.6%減少し、不安の主要な認知的原因である負の注意バイアスを256.95%減少させたことが分かったとしている。
両社はこの結果を受け、今後も共同でPTSD、多発性硬化症、摂食障害、依存症などの様々な疾患に対する新たなアプローチを研究するとしている。
※1 tDCS
transcranial direct-current stimulationの略。電極を用いて頭皮の上から1~2mA程度の微弱な直流電気を、約10~30分間通電する手法。その他に磁気刺激を用いる、経頭蓋磁気刺激(TMS)というのも知られている。