ゲノム編集による双子誕生か、研究者がデータ公開へ
今週始めより、一部の通信社と中国メディアに、中国の研究者がゲノム編集を施した受精卵による双子を誕生させたと主張する報道が相次ぎ、話題と議論を呼んでいる。研究者は現在香港で開催されている国際会議にて詳細を発表するとしていたが、中国メディアによると、28日にもデータを公開する模様だ。
エイズウイルス(HIV)感染を防ぐためゲノム編集
メディアを通じ研究成果を主張しているのは、中国・南方科技大学の賀建奎(ハー・ジエンクイ)准教授らの研究チーム。チームはAP通信や一部の中国メディアの取材を受け、男性全員がHIVに感染している不妊治療中の7組が実験に参加、1組が妊娠・出産したと語った。「ルルー」と「ナナ」の双子だという。エイズウイルス(HIV)が細胞に侵入する入り口となるたんぱく質の働きをゲノム編集技術による遺伝子操作で抑え、感染を防ぐ狙いとのことだが、実際に女児がHIVの耐性を持って生まれてきたかどうかは不明だとした。論文も発表しておらず、現時点では詳細の説明を拒否している。
所属大学のほか、科学者、中国政府も非難
この報道は世界を瞬く間に駆け巡り、大きな反響と議論、非難の的となった。准教授が所属しているとされる南方科技大学は声明を発表し、大学としては関知していない研究であり、倫理規約に違反していると認識していること、准教授は2018年2月から休職していること、第三者を入れた委員会による調査を行うことを表明。また北京大などの科学者122人は連名で声明を発表し「人体実験をするとは狂っているとしか形容できない」と厳しく非難した。中国の国家衛生健康委員会も、地元当局に調査を指示しているという。
中国メディアの報道によると、賀准教授は中国科学技術大学出身で、2011年から2012年にかけ、米国スタンフォード大学バイオメディカル工学科のスティーブン・クエーカー教授の研究室所属の博士研究員として遺伝子配列研究を学んだという。また遺伝学にかかわる8社の経営幹部を務め、そのうち2社においては代表職であることも伝えている。
このような状況の中、研究チームは27日から開催中の第2回ヒトゲノム編集に関する国際会議の中で、28日にも詳細を報告する。なお国際会議の組織委員会も声明を発表し「この研究計画が、米国科学アカデミー等が提示する実施条件の指針に合致するかは明らかでない」としている。