移動診療車で遠隔診療、処方薬はドローンで 浜松市の「春野医療MaaSプロジェクト」
浜松市の中山間地域である春野地区で、10月下旬より「移動診療車」によるオンライン診療と、ドローンによる処方薬配送などの効果検証を行う「春野医療MaaSプロジェクト」が実施されている。スマートフォンやPCを持たない、あるいは操作の難しい高齢者に対応しつつ、テクノロジーを医療資源の乏しい地域で活用するモデルを示せるか注目されている。
「MaaS」+ドローン配送(車両配送)を組み合わせ課題解決目指す
今回の実証実験の舞台は、浜松市北部の中山間地域に位置する天竜区春野町。JR浜松駅から車でおよそ1時間ほどの場所だが、人口4,018人(10月1日現在)、高齢化率が約50%と全国平均より高い。運転免許を返納した住民も多いことから「通院難民」問題を抱え、かつ域内5つの診療所の医師も高齢化しており、地域医療の継続に向け課題が山積している。
今回の実証実験には、地元の医師会に加え、昨年から長野県伊那市などで移動診療車を用いた実証を行なっているMONET Technologies(以下MONET)やドローン技術を提供するトラジェクトリー、地元薬局の杏林堂薬局などが参加。具体的には春野地区の診療所の患者(10人程度)を対象に、MONETが提供する、医療機器とオンライン診療に必要な機器などを搭載した移動診療車を活用、看護師(または資格を持たない補助員)が移動診療車で患者の自宅付近まで訪問し、車両内のテレビ会議システムを通して、医師が遠隔地から患者を診察する。
オンラインで受診した患者に対しては、引き続いてオンラインでの服薬指導を行い、ドローンや薬局の配送員による薬剤の配送を行う。現状、域内に調剤薬局が存在しないため5つの診療所すべてが院内処方していることもあり、診療所の医師が服薬指導を行った場合は、そのまま院内処方として処方薬をドローン配送する。服薬指導終了後、トラジェクトリーのオペレーターが危険性の少ない町内の川沿いを患家宅まで飛行させ、庭などに着陸させて診療所に連絡。ドローンの位置情報を確認していた診療所が患者に連絡するという。薬局薬剤師が服薬指導をした場合は、浜松市内を本拠とする杏林堂薬局が社用車を使い処方薬を配送する。
実証実験は10月下旬から12月末までの実施を予定しており、浜松市としては終了後も課題を含めて評価を行い、次年度以降も何らかのかたちで継続を検討している。