新型コロナウイルス感染抑制へ、信頼できる情報源の公表相次ぐ
日本における新型コロナウイルスの感染状況は、2月下旬に入り市中感染の段階に入ったと認めざるを得ない状況になっている。政府も本日(2020年2月26日)、首相が今後2週間の大規模イベントの中止要請を行うに至った。一方で、医療関係者や自治体などが感染拡大抑制に向け、インターネットを活用し信頼できる情報を公開する取り組みが相次いだ。
自治体の情報公開、福岡市の取り組み
各自治体はそのホームページで保健所の情報や受診・相談の目安、感染拡大抑制に向け手洗い励行などのお知らせを掲出しているが、中でも福岡市が公開している情報は、平易で分かりやすい事例のひとつだ。感染者の情報だけでなく、PDFで咳エチケットやマスクの作り方、消毒用アルコールがない場合での消毒・除菌方法についてまとめており、感染していない人たちが留意すべき実用的な情報が取り上げられている。
外部リンク:福岡市からのお知らせ 使い捨てマスクがない場合
外部リンク:福岡市からのお知らせ 消毒用アルコールがない場合の消毒・除菌について
東北医科薬科大学病院、感染予防ハンドブックを公開
医療機関も感染拡大抑制・防止に向け、有益な情報発信を行なっている。東北医科薬科大学病院は、ホームページで19ページにもわたるまとまった情報源をハンドブックとして公開した。市民向けとなっており、新型コロナウイルス自体の説明から始まり、症状、感染経路の説明、感染抑制・防止に必要な行動、消毒液の作り方まで体系的にまとめている。特に、近親者が感染した場合どのように接したらよいかについても記載している。
在宅医療関係者が、感染拡大防止に向けインフォグラフィックを公開
米CDCの感染防止ガイドラインの一部を日本語に翻訳(既報)した医師が、引き続き主に医療関係者、介護関係者に向けた情報発信を強化している。先日の翻訳に引き続き、日本有数の在宅療養支援診療所グループである医療法人社団悠翔会理事長・診療部長で内科医の佐々木淳氏が、高齢者施設に関わる在宅医療者が関係者に対策を説明するための補助資料を公開している。
佐々木氏は今回の資料公開の狙いについて、高齢者施設に関わる在宅医療者の主たるミッションは大きく4つあるとし、具体的な行動指標を明らかにしている。
①高齢者施設をCOVID-19のクラスターにしないこと。
高齢者施設を「安全地帯」として維持するために、最適な情報ケアの提供を通じて、施設運営者と連携しながら入居者を感染から守ること。②もし感染者が発生した場合には、施設内での隔離ケアがきちんとできるよう支援できること。患者の状態をきちんと観察し、その時々の状況に応じた最適な医療の提供ができること。
③もし感染者が重症化してしまった場合には、治療方針の選択について、臨床倫理的判断をしっかり行うこと。他の疾患と同様、あらかじめACPを通じて本人が納得できる選択についてみんなで考えておくこと。
④もし重症化した感染者が積極的治療を選択しない場合には、肺炎に伴う呼吸困難感など、苦痛の緩和がきちんとできること。
同氏はこの4つについて「実際のところ、要介護高齢者が重症化しても、治療薬がない現状においては、人工呼吸管理、場合によっては人工心肺を回しながら、本人の回復を待つ以外の治療法がありません。もともと脆弱な高齢者が、このような状況から立ち上がれる可能性は非常に低く、その侵襲性の高さを考えると、治療をしないという決断が十分に倫理的に妥当であると考えられるケースは少なくないと思われます」とし「COVID-19だから何が何でも病院へと思考停止に陥るのではなく、他の疾患と同様、何がその人にとって最適な選択なのかを考えるというプロセスを大切にしたい」と述べている。