相談者とカウンセラー両方がアバターで会話、心理的抵抗を低減 東京大学が相談システムを開発

  心理相談の利用者とカウンセラー双方がアバターを介して会話すると、相談に対する心理的抵抗が減り悩みを話しやすくなる——。そんな調査結果が東京大学の研究チームから発表された。研究チームでは調査結果をもとに、より悩みの解決に貢献できるサービス体系をまとめ実用化に役立てたという。

Webカメラで実際の人の動きを認識、アバターに反映される相談システム

 東京大学大学院教育学研究科の下山晴彦研究室は、パーソルワークスデザインとの共同研究により、バーチャル上で誰でもどこからでも「心の専門家」に気軽に相談できる双方向アバターを活用した心理相談システム「KATAruru(かたるる)」を開発した。このシステムの特徴は、相談者とカウンセラーの双方がアバターを介して会話することと、そのアバターに、接続したWebカメラを通じて認識した実際の人間の動きを反映できること。顔認識センサーを搭載しており、利用者の表情や頷きを反映するほか、ジェスチャーボタンを使うことで心理相談において重要な非言語表現(頷きや沈黙で考える姿勢)を表現できる。また相談者、心理専門職それぞれ5パターンのアバターが選択可能で、匿名性も高めることができるという。

 研究チームではこの相談システムの有効性検証の一環として、81名の会社員に実施。事後アンケートの結果をまとめたところ、70%以上が「気持ちを受け止めてもらえた」「本音で話せた」と回答し、また、約64%が「悩みを語ることへの抵抗感が軽減された」と感じていることが明らかになった。研究チームではアバターによる共感的な心理面接、およびその匿名性の有効性を示すものだとする一方で、「悩みが整理された」と回答した者は51%にとどまったと明らかにした。

 研究チームは、この背景には、単回では問題の整理まで到達することが難しかった事例や、具体的な助言を得るという利用動機の強い社員が一定数存在したことがあるとみて、「気軽に相談」と「本格的相談」という目的の異なる2種類の相談形式を設定し、「KATAruru」のサービス体系に組み込んだ。相談自体への心理的抵抗、いわゆる「サービス・ギャップ」が問題となっている日本の産業界にとって、利用者が主体的に相談に訪れる組織土壌を創る画期的なサービスとなったとしている。