近畿大学、AIを活用したがん遺伝子パネル検査の研究開始 SBI生命が支援

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2018年3月26日、近畿大学はAIを活用したがん遺伝子パネル検査の確立に向け、先行研究を今年の夏から開始すると発表した。同時に、SBI生命が研究にかかる費用を支援し、新たな保険商品の開発に向けた研究を開始することも発表された。

 

がんゲノム医療のコスト低減へ、AI活用と保険商品化を探求

がん遺伝子パネル検査は、「次世代シークエンサー」と呼ばれる遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置を活用し、患者のがん組織や血液から遺伝子情報を解析する検査技術。がんの標準治療が効かなくなり使用できる薬がなくなった場合でも、効果が期待できる薬物治療を見つけられる可能性がある。装置の登場当初から、がんのいわゆる「プレシジョン・メディシン(精密医療)」を牽引するものとして普及が期待されているが、次世代シークエンサーの登場で以前より劇的にコストが下がったとはいえ、まだ日常診療に投入できるほどの費用にはなっていない。

近畿大学医学部ゲノム生物学教室(西尾和人教授 )では、「近大クリニカルシークエンス」プロジェクトとして全国に先駆けがん遺伝子パネル検査に取り組み、これまでに1,000件以上のがん組織サンプルの遺伝子解析を実施してきた。このプロジェクトは当初、公的研究資金等による支援を受けており、平成28年度末までは遺伝子解析結果を患者に無償提供することができていた。その後も研究室では、クラウドファンディングも活用するなど、可能な限り安価に解析結果を患者へ提供できるよう模索を続けていた経緯がある。研究室では今回その課題を解決するため、さらなるシークエンスの高度化と効率化の手段として、AIの活用に取り組む。遺伝子解析の経験豊富な医師と、情報処理能力と作業時間の効率化というメリットを持つAIが連携することで、より最適ながんゲノム医療の提供体制を構築するとしている。

また、この高額費用負担という課題に対して、保険商品化 による費用負担軽減を目指し、SBI生命が生命保険業界で初めて取り組む。端緒としてこの夏に近畿大学が始める研究を資金面で支援、ノウハウを研究する。両者は、がん大国の日本にゲノム医療を一日も早く普及させ、一人でも多くのがん患者の生存率を改善できる社会基盤づくりに貢献するとしている。

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