京都大とNTT、臨床データ流通に向け新会社設立 次世代医療基盤法の認定事業者は目指さず

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 京都大学とNTTが、共同で臨床データの流通エコシステム確立を担う新会社を設立したと発表した。いわゆるRWD(リアルワールドデータ)と呼ばれる医療機関が持つ臨床データを、独自技術で統計データのみにして拠出してもらう仕組みで、提供先も規制当局や自治体、アカデミアなどを主に想定している。当初はがん治療に関する臨床データ流通から始めるという。

「認定事業者はそぐわない」

 新会社の名称は「PRiME-R」で、代表取締役はNTTライフサイエンス代表取締役社長の是川幸士氏が務める。新会社は日本医療研究開発機構(AMED)の事業「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」において進めてきた研究成果をもとに、RWDの流通エコシステムの確立を目指す。

 具体的にはNTTの子会社であるサイバー・ラボが確立した「サイバーオンコロジー®️」技術を活用し、各医療機関が持っている臨床データを統計データにまとめた状態で流通させる。新会社は個人情報を保有せず、同社のデータセンターには、患者の同意を得たうえでかつ匿名化された状態のデータを保管する。またデータ保管にあたっては、第三者委員からなる「医療倫理ガバナンス委員会」で審査した上で行う。京都大学としては、大学が直接出資することで事業活動の倫理面を規律し、医療情報の適正な利活用を担保したいとしている。

 対象とするデータは、AMED事業で取り扱った分野でもあるがん領域から始める。したがって病院外のデータは取り扱わず、提供先も行政、規制当局、アカデミア、医療機関などに基本的にはとどめる予定だ。同社はMed IT Techの取材に答え、「本事業は次世代医療基盤法が想定する大規模で広汎な一般的な健康・医療データを 収集する事業と異なることから、認定事業者になることは現時点では考えていない。また、より深いデータ収集に際しては、患者からの能動的なオプトインが不可欠と考えており、患者からのデータ収集にオプトアウトを想定している認定業者はそぐわないと考えている」と事業の基本的な考え方を示した。

「相互補完関係にある」

 昨年末、同じ京都大学系のプロジェクトである「千年カルテプロジェクト」の後継団体LDIが次世代医療基盤法に基づく認定事業者、NTTデータが加工業者の認定を受けたが(既報)、「PRiME-R」の事業との関係性に関して、Med IT Techが聞いたところ「(LDIの事業で取り扱うデータは)広汎で病院外のデータも含み、国民全体の健康情報の把握などに適している一方、本事業は、医療機関内で発生する臨床データに限定され、特定の疾患に特化した詳細で深い専門情報から構成されるため、臨床の具体的な実態を把握することに適している。異なった特徴を有していることから相互補完関係にあると考えている」と回答した。

 今後京都大学とPRiME-Rは賛同する医療機関(目標は100機関以上)を募り、データ流通の仕組みを確立させることで、がん医療実態の可視化と最適化を目指す。

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