聖マリアンナ医科大学病院、希少難病の患者向けにオンライン診療を開始
川崎市の聖マリアンナ医科大学病院は、希少疾患であり、難病指定されているHTLV-1関連脊髄症(HAM)の患者向けに、 2019年8月からインターネットやスマートフォンを利用したオンライン診療を開始する。全国の患者を対象とする。オンライン診療を導入することで患者本人のみならず家族の肉体的・金銭的負担をも軽減し、患者の満足度を向上させることを目指す。
「負担軽減だけでなく、 診察頻度にも貢献できるのでは」
HAMは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−1)によって脊髄の炎症が引き起こされ、 歩行や排尿・排便が困難になる疾患で、日本全国の患者数約3,000人と推定される希少疾患であり、難病にも指定されている。 専門医が少ないため、厚労省研究班の調査※1によると、HAM患者のうち37.4%は往復4時間程度以上かけて通院しており、 16.4%が1回の交通費として8,000円以上を負担しているという。 またHAM患者のうち41.8%が「一人で外出はできるが困難を伴う」と答え、 47.8%が家族の送迎で通院している。こうした背景から、 HAM患者のうち44.8%が遠隔医療を「受けたい」と答えている。
同病院は2007年度からHAMの専門外来を設け、 これまで全国から患者を受け入れており、調査結果を受けて2019年8月からオンライン診療の導入を決めた。専門外来担当の山野嘉久大学院教授は、「7年ほど通院している70代の患者から『通院が大変で治療を続ける自信がない』と相談を受けたことをきっかけに導入を決めた。当院には北海道や沖縄、 東京都の離島から通っている患者もおり、オンラインで診療することで、 患者や家族の負担を減らすだけでなく、 診察の頻度をあげることにも貢献できるのではないかと考えている」と述べている。なお、オンライン診療のソフトウェアはMICINが展開している「curon(クロン)を活用する。
※1
「難病HAM患者さんの遠隔診療等の医療ニーズに関する意識調査」より。 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターの山野嘉久大学院教授らが厚労省難治性疾患政策研究事業による研究班の活動として調査。 対象は全国HAM患者レジストリ(HAMねっと)に登録しているHAM患者503名(有効回答数は134)。