「医療情報連携ネットワーク」一部が補助金有効活用されず 利用低迷把握せず放置
2019年10月28日、会計検査院は「医療情報連携ネットワーク」構築に関する助成金の使用状況、執行に関する審査状況の検査を行い、厚生労働省に対し、法令に基づき改善を要求したと発表した。18都道県を対象に実態調査したところ、6都道県内の9システムについて、何らかの原因でまったく稼働していないか利用されておらず、しかもその状況が一部は放置されていたことが分かったという。
「動作確認不十分」「稼働しても利用者皆無」「状況把握せず」
「医療情報連携ネットワーク」は、医療圏内で診療に必要な患者情報を共有するためのシステムで、かかりつけ医以外も効率的に患者の情報を活用でき、適切な医療介護の質を担保できるとして政府が普及を推進している。2014年に消費増税分の活用用途として「地域医療介護総合確保基金」が創設されたが、この基金を活用して各都道府県がシステムを整備してきた。会計検査院は今回、この基金を活用して整備された18都道県の60システム(交付金相当額計155億8984万余円)について、「システムが適切に構築されているか」「整備された地域医療ネットは適切に運用されているか」「都道府県による審査等は適切に行われているか」などに着眼して検査した。
検査の結果、6都道県内の9システムについて適正とは言えない状況であることが明らかになった。2道県の2システム(交付金相当額1,333万円については納品時の動作確認を十分に行わないまま検収を完了してしまい、システムの不具合により事実上利用可能な状態になっていない状態が1年以上放置されていた。4都県の5システム(交付金相当額計2613万余円)については、システムの整備が完了して1年以上経過しているにもかかわらず、参加医療機関等及び参加患者が皆無かまたは患者数が50名以下となっていた。さらに2県2システム(交付金相当額計12億1237万余円)については、整備完了後1年以上経過しても一部機能が全く利用されていないか、利用が低調なままだった。
会計検査院はこのような事象が発生している原因について、システムを整備した事業主体(各都道府県自治体も含む)の管理責任を主に問うているが、都道府県に対し厚生労働省が指導、助言していないことも指摘しており、同省に対しても事態の是正改善を要求した。
外部サイト:会計検査院「会計検査院法第34条の規定による処置要求及び同法第36条の規定による処置要求」