診療ガイドラインでのICT関連記載、1学会のみ 厚労省のアンケートで判明

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2019年6月12日、中医協(中央社会保険医療協議会総会)が都内で開催された。その中で各学会へのICT活用状況についての聞き取り調査の内容が報告され、診療ガイドライン内にICTにかかわる記述を行なっている学会が1学会にとどまっていることが分かった。
 

日本医学会連合に所属する学会の中で1学会のみ

中医協では現在、2020年の診療報酬改訂に向け幅広い議論が行われている最中だが、この日の議題のひとつが「医療におけるICTの利活用について」。現状の整理の一環として「各診療領域におけるICTの利活用に関する調査」が今年1月に厚生労働省によって行われ、その調査結果も報告された。

厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf
厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf

この調査は日本医学会連合に所属する129学会に調査票を送って回答を求めたもので、59学会から回答があった(回収率45.7%)。各診療領域の個別の疾患の診療ガイドライン・診療指針等に、ICTの利活用に関する記述があるか、ICTの利活用に関するなんらかの取り組み実績等を聞いたところ、まずガイドライン等に記載があるかについては、日本皮膚科学会の1学会のみであることが明らかになった。

厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf
厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf

またなんらかの取り組み実績については、特に行なっていない学会が44学会で最多となった。なお、今後ガイドライン等にICTの利活用に関する記述を盛り込むかについては、過半数の39学会が「取り組む必要がある」「取り組む必要があるが時期尚早」と回答した。ただ「時期尚早」と回答した理由として、「対面診療が基本」「エビデンスが十分でない」と認識していることも明らかになっている。

なお、先日改訂案が公表された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」には、『情報通信機器を用いた遠隔からの高度な技術を有する医師による手術等』も認めると盛り込まれたほか、『(※具体的な対象疾患や患者の状態などの詳細な適用対象は、今後は、各学会などが別途ガイドラインなどを作成して実施すること。)』と、各学会での取り組みを求めている。

 

特区での遠隔服薬指導には「症例が足りない」と意見も

厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf
厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf

この日は、遠隔服薬指導についての現状把握と議論もあった。現在国家戦略特区の3区域で遠隔服薬指導が可能と指定され、そのうち福岡市と愛知県において事業が行われているが、3月31日時点で9例の症例数に留まっている(愛知県においてこの後数例追加があったとされている)。この現状について、診療側委員から「エビデンスが集まっていない」と今後の特区以外への適用拡大に慎重な意見が上がる一方、支払側委員は「オンライン診療ができて遠隔服薬指導ができない理由はない」と推進を主張した。

なお、遠隔服薬指導については、今国会に提出されている薬機法改正案では「対面指導義務の例外」と位置付けられており、特区以外にも解禁される予定。

 

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