名大病院、IoTとLPWAを活用する実証実験を開始 サトーヘルスケアとシスコシステムズが参加

 

先進技術の利用により医療サービスの変革を目指す「スマートホスピタル構想」を掲げる名古屋大学医学部附属病院のメディカルITセンターは、IoTデバイスとLPWAネットワーク技術を活用した、医療サービスや安全性の向上を実現するサービスモデルの実証研究を実施する。サトーヘルスケアとシスコシステムズがそれぞれ共同研究者として参加する。

 

IoTで院内の患者状態と医療従事者の行動を把握、オペレーション最適化を目指す

名古屋大学医学部付属病院では、「スマートホスピタル構想」のもと、先進技術や情報通信技術で効率的で安心・安全な 医療を提供し、地域・家庭とつながるあたらしい医療を目指すとしている。今回、IoTデバイスとLPWAネットワークを活用した具体的な臨床試験を2018年2月より実施する。

具体的には、医療従事者と患者の双方がIoTデバイスを身に着け、医療従事者の業務プロセスや、患者さんのバイタル情報を高精度に収集・記録・集約し、繁忙時間帯の見える化による適正な人員配置や異常時対応の迅速化などを通じた医療サービスの向上を目指す。サトーヘルスケアの提供する「高精度屋内位置測位システム」で、医療従事者の位置を病室のベッド単位で検出、今まで見えなかった医療従事者の業務状況や患者さんとのコミュニケーションを可視化。また、腕に装着するバイタルモニタービーコンを取り入れ、患者さんのバイタル情報(脈拍数や活動量、ストレスレベルなど)の測定もリアルタイムに行い、医療従事者が患者の状態変化を迅速に把握できるようにする。

本研究の担当者である名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンターの大山 慎太郎研究員(医学博士)は、「入院患者さんへのサービスや安全性の向上は重要な課題であり、スマートホスピタル構想の核となります。サトーヘルスケアのソリューションで、新しい入院体験と安心の医療サービスを提供できるよう研究を進めてまいります。蓄積したデータはAIを活用して分析することで、現場のインシデント(事故につながりかねないミス)の予防につながるシステムを構築したいと考えています」と述べた。

 

地域医療におけるLPWAの活用研究も実施

また、愛知県最東端、静岡県に面する中山間地域である奥三河地区で、地域医療に関する実証実験も実施する。在宅または介護施設等に入居する患者さんにウェアラブルデバイスをつけてもらい、バイタルサインや運動量などのデータをリアルタイムに取得、患者の生活指導や、早期の異常検知を促すとともに、患者の健康・安全を守ることを目指す。2つの実証研究には、低電力での運用や長距離のデータ伝送が可能なLPWA※ネットワーク技術をインフラとして採用し、シスコシステムズのLoRaWAN※向けワイヤレスゲートウェイを活用する。

名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター長(病院教授)の白鳥義宗氏は「我々名大病院では、大学病院において最先端医療を追求していくことはもちろん、地域に開かれた大学・病院として、地域の方々に対する医療連携や健康増進事業に対しても、ご協力していく必要があると考えております。最先端のIT技術やそれによるイノベーションを、患者さんや地域住民の方々にお届けしていくことが出来るように努力していきます」と述べている。

※ LPWA、LoRaWAN(ローラワン)

免許が不要な1GHz以下の電波帯域(日本では920MHz帯)を使った通信規格を総称してLPWA(Low Power Wide Area)と呼ぶ。文字通り他の電波帯域を使う通信と比べ通信機器が低電力で済み、かつ電波の通りが良い(理論上は数十km飛ぶとも言われる)。日本で実用化されているLPWA規格には、SIGFOXとLoRaWANの2つがある。