「遠隔聴診」も可能なオンライン診療システム、メーカー直販で展開 シェアメディカル

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 感染防止対策を行いながらの診療体制の構築が求められるなか、デジタル聴診デバイスなどを展開するシェアメディカル(東京都千代田区)は、聴診も可能なオンライン診療システムの提供を2021年1月より開始する。将来的には既存のオンライン診療システムとの連携ができるよう、SDKの提供も検討しているという。

チェストピースに取り付ける、生体音増幅型方式のデバイスを展開

 同社が展開するデジタル聴診デバイス「ネクステート」は、振動を電圧に変換する従来の圧電素子型の電子聴診器ではなく、医師が慣れ親しむ機械式聴診器の微弱な音をデジタル化する生体音増幅型方式を採用。原音を忠実にデジタル化し医師に届けることを設計コンセプトとし、チェストピースに取り付けるという簡便な方式で聴診器をデジタル化することに成功した。市販のヘッドフォンやスピーカーなどとワイヤレスで接続可能なことも注目され、コロナ禍で、患者と医療従事者双方を守りながら診療を継続できると評価を受け、現在までに国内900施設以上で採用されているという。

医師が診断に必要な生体音を正確にリアルタイム伝送するシステムを開発

 他方、同社のもとには、発熱外来を設置している病院や在宅医療を行う診療所などから、医師のいる診察室と発症疑いの患者のいるスペースをネットワークで繋ぎ、より遠距離から聴診を行いたいとする要望や、オンライン診療への応用を望む声が数多く寄せられていたという。同社はそのニーズに応え、今回、聴診音をネットワーク伝送することを前提としたシステム「ネクステート・シナプス」を開発した。

 ネットワークを経由する聴診音の伝送については、既存のビデオ会議システムの場合、聴診音をノイズとしてとらえられカットされてしまうことが多いという課題がある。同社では、ネクステートがデジタル化した聴診音、特に医師が聴診する際に重要な低音域を中心とする周波数帯(人間の可聴域以下の10Hz〜700Hz)の生体音を正確にリアルタイム伝送するアーキテクチャを開発(特許取得済み)。また、エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト(大阪府大阪市)が提供する音声・映像伝送システムと組み合わせて活用することで、インターネットを利用した遠隔地とのリアルタイム聴診も可能なシステムを実現した。同社では、特に呼吸音はおおむね100~1000Hzであり、医師の印象によるがこのシステムでセンシングしやすいはずだとし、寄せられていた発熱外来や在宅医療ニーズに応えられると想定している。なお聴診器を胸部に当てる行為自体は医療行為ではないため、同社では介護施設に属するヘルパーなどでも活用可能だとしており、今後、聴診器を当てる技能を教える勉強会などを開催ししたいとしている。

 同社ではすぐに使い始められるよう、タブレット、スマートフォンは予めすべて設定済み、4GLTE通信費も込みとして回線工事や別途契約も不要なセット販売での提供を行う。またネクステート自体が医療機器ではないため、ネクステート・シナプスも医療システムの扱いにはならず、シェアメディカル自らがWebサイトなどで直販(月額98,000円を予定)する。また、将来的には既存のオンライン診療システムを使用する医療機関が使いやすいよう併用を可能とするSDKの提供も予定しており、すでに電子カルテベンダーなどから引き合いがあるという。

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Posted by Shigeru Kawada