岡山大、日本初の医療用針穿刺ロボットの臨床試験実施 全10例で成功
岡山大学の研究グループは、同大学で開発した『CTガイド下針穿刺ロボット(Zerobot®)』を用いた人に対する初めての臨床試験を実施し(全10症例)、不具合や重篤な有害事象はみられなかったと発表した。ロボットを用いた病理検査のための針穿刺の実施は、国内では初めて。
術者の放射線被曝を防ぐ、医工連携プロジェクト
臨床試験を実施したのは岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の平木隆夫研究教授、大学院自然科学研究科の松野隆幸准教授、大学院ヘルスシステム統合科学研究科の亀川哲志講師らのグループ。CT画像を見ながら術者が病変に針を刺入して行うCTガイド下IVR(日本語名:画像化治療)と呼ばれる検査・治療は、肝、腎、肺などのがん治療が可能なラジオ波治療や凍結治療の他、生検や膿瘍に対するドレナージ、神経ブロックや術前マーカー留置など多種に活用されている。針の刺入のみで行えるため低侵襲であり、患者の高齢化も相まってニーズが高く、岡山大学病院では年間500件以上の実施件数があるという。しかし、術者はCT装置のすぐ近くでCTを撮影しながら手技を行うため、被曝を避けられないという課題がある。同大学ではこの術者の被ばくを軽減するため、CT装置から離れた場所で術者が遠隔操作で針の刺入を行えるロボット(Zerobot®)を2018年度に開発した。
今回はこのロボットを用い、2018年6月〜10月にかけ、腎臓、肺、縦隔、副腎、筋肉に腫瘍がある10例の患者に対し事前に臨床試験について担当医から詳細な説明を行った後、ロボットを用いたCTガイド下穿刺を行った。ロボットによる腫瘍への針穿刺は10例全例で成功し、ロボットの不具合や重篤な有害事象はみられず、術中の医師へのCTによるX線被曝はなかった。研究グループの平木隆夫研究教授は「人の手で行う手技と違い、ロボットには様々な発展性があり、患者や医師に多くのメリットをもたらす可能性がある。今後は更に大規模な臨床試験(治験)を実施し、日本発・世界初の針穿刺ロボットの製品化を実現したい」と述べた。
なおこの研究成果は2019年8月23日付で、ヨーロッパの科学雑誌「European Radiology」に掲載された。