大阪大学発の「3Dプリントによるフェイスシールド」 大量生産へクラウドファンディング開始

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 大阪大学が地元のものづくり企業と協力して開発した、クリアファイルを感染防護に必須なフェイスシールドに転用させるパーツを本格生産するため資金を募集する。20日、大手クラウドファンディングサイトで寄付募集を開始した。集まった資金でパーツを10万台生産し、必要な医療機関に無償提供する。

大阪大学とメガネフレームの世界的メーカーが協力 データ無償公開済 

 新型コロナウイルス感染拡大地域を中心に、医療従事者の感染を防ぐ医療防護具の深刻な不足が叫ばれている。自らも当事者として直面している、大阪大学次世代内視鏡治療学共同研究部門特任教授で消化器外科医の中島清一氏は、この事態に対応するため、4月初旬、メガネフレームの世界的メーカー「シャルマン」と3Dプリンターで出力できるフレームを開発した。

 このフレームは文房具のクリアファイルを頭部に着用しフェイスガードとして転用するための部品。シンプルな構造のため容易に出力が可能で、費用も非常に安い。さらに出力のためのデータは中島氏の研究室Webサイトで無償公開、3Dプリンターがあれば世界のどこでも調達できるようにしたうえで、今月3日に会見を開き広く利用を呼びかけた。

 中島氏によるとその後、データをダウンロードして手元の3Dプリンターで出力し、近くの医療施設へ届けるといった草の根運動が拡がっているという。しかしフレームを1つ出力するのに2時間程度かかるため、当座をしのぐことは可能だが、この生産方法では全国で何百万個も不足していると言われる現状を早急に解決することは不可能だ。そこで次の取り組みとして、中島氏はこのデータを元に工場で大量生産できる金型を製作することにし、地元東大阪のものづくり企業の支援も得て体制を整え始めた。

製作資金調達にクラウドファンディングを活用 すでに目標額の3割近く達成

Readyforのプロジェクトページより

 金型が製作できれば、そこからは飛躍的に生産スピードが上がり、今後さらに感染拡大しても対応できる可能性が高くなる。課題は製作資金だ。金型の製作には1つにつき100万円かかり、配送や関連の費用もかかってくる。中島氏らはこの費用問題を解決するため、20日、大手クラウドファンディングサイト「Readyfor」でのプロジェクトを開始した。目標額は500万円で、この資金でまずは金型を2つ製作、2カ月間で10万個のフレーム製作、無償提供を目指す。

製作のためのデータは改良を続け、より扱いやすいものに(左:当初データ、右:最新版)

なお金型による生産は、当然ながら作り直しが効かない。そこで公開済みの3Dプリンター用のデータを適したものへと改良することが必要だが、研究室のスタッフ、全国の3Dプリンターの専門家、プロダクトデザイナーらが無償で協力しデザインはほぼ固まったという。量産に関しても関係者が採算度外視で協力を申し出ている。

 Readyforでの募金は20日午前から開始。すでに多くの賛同が寄せられ、すでに目標額の3割近くが集まっている。このプロジェクトへの寄付は、大阪大学への寄付となり税制優遇が適用される。

外部リンク:新型コロナ 命を守るフルフェイスシールドをいち早く医療現場へ(Readyfor)

 

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