日本初の「ヘルスケアモビリティ」の実証実験、長野県伊那市で12月より開始

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 2019年11月26日、フィリップス・ジャパンと長野県伊那市、モネ・テクノロジーズは共同で、2019年12月より「ヘルスケアモビリティ」の実証実験を開始すると発表した。伊那市内の医療機関がかかりつけの患者に対しオンライン診療を行う場合に、今回開発した一般医療機器を積んだ車両を予約、所属の看護師が患者の自宅まで移動し、車両内で診療を実施する。実証実験は2021年3月までだが、その後も診療モデルの確立・他地域への拡大を目指す。

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「過疎地の医療を維持するため、必ず必要」

(左より)フィリップス・ジャパン代表取締役社長の堤浩幸氏、MONET Technologies 代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏、伊那市長の白鳥孝氏

 この日、都内で開催されたフィリップス・ジャパンの2020年事業戦略発表会。その戦略の大きな柱として「ヘルスケアモビリティ」構想が発表され、長野県伊那市、MONET Technologiesとともに12月より実証実験を行うことが発表された。実証実験に投入されるのは、トヨタのモビリティ基金の資金などで製作された、福祉車両ベースの特別車1台。このほど完成し、発表会で初披露された。12月からはオンライン診療の枠内で診療を行い、効果を実証するという。

 発表会に出席した実証実験のパートナーである伊那市長の白鳥孝氏は「伊那に生きる、ここに暮らし続ける」をキャッチフレーズに、これまでも過疎地域の課題を克服すべく自動運転バス実験(レベル4)、AIを活用したタクシー配車事業を主導してきている。この実証実験についても「慢性期医療で人手不足。市域が広く、満足に往診もできない」と過疎地における医療の課題をあげ、実験への期待を表明した。

 同じくパートナーとして出席したMONET Technologies代表取締役兼CEO(ソフトバンク代表取締役副社長)の宮川潤一氏は「設立から1年、400あまりの自治体の課題をヒアリングし続けてきた」と語り、その答えのひとつがこの実証実験であり、「自動運転の進展を見通せば、過疎地の医療を維持するためこの事業は必ず必要だ」と意義を強調した。

「オンライン診療」のその先はなるか 実験終了後もモデル構築模索

 今回完成披露された「ヘルスケアモビリティ」車両は、将来的には移動診療や服薬指導、より高度な検査機器を搭載しての診療を視野に入れたものではあるものの、現在の法規制を遵守するための腐心がうかがえるものとなっている。まず事業の建てつけとして、この車両は医療機関のものではなく、すでにかかりつけの患者の慢性期医療でオンライン診療を行う際、そのたびごとにそれぞれの医療機関が車両を「予約」して使う。つまりMaaSの枠組みだ。

 そして予約日時には、あくまで診療補助を行う者として看護師が車両に乗り患者宅前へ乗り付け、車内に患者を招き入れてから、車内のシステムでオンライン診療を行う。ここは、オンライン診療ガイドラインでも類型上認められている「D to P with N」のかたちだ。フィリップス・ジャパンの担当者によれば、当局との対話を通じて、自宅まで乗り付けることで、無医村以外では認められていない巡回診療ではなく「自宅でオンライン診療している」という解釈になる、という落としどころを見つけたという。したがって車内に搭載できる医療機器のレベルは、フィリップスのコア領域である高度医療機器ではなく、心電図モニタ、血糖値測定器など医療従事者以外も操作できる一般医療機器に限られてしまう。

 フィリップス・ジャパンと伊那市は、今回の実証実験にあたり連携協定を結び、実験終了後もヘルスケアモビリティ事業の中長期的な目標を共有していく予定だ。その実現にコミットすれば、いずれ現在の法規制の突破を目指さざるを得ない。そのための具体的な取り組みについては今回の説明会では明らかにされなかったものの、担当者は「今回の3者はどこかが主導しているというわけではない。地域課題解決に意欲的な伊那市という自治体だから実現できた側面ももちろんある。今後もこの3者の枠組みを継続していきたい」と展望を語った。