糖化アルブミンによる血糖状態の「週次モニタリング」の確立を目指すProvigate、9.1億円の資金調達

 Provigate(東京都)は27日、Sparx Group、ANRI、Coral Capitalより総額9.1億円の資金調達を実施したと発表した。調達資金で低侵襲・低コスト・簡便に計測できる糖化アルブミン(GA)の検査デバイスの開発を目指す。血糖状態のバイオマーカーとしては糖化ヘモグロビン(HbA1c)が一般に使われているが、同社ではGAの検査デバイスを普及させることで家庭でも簡単に血糖状態を把握できるようにしたいという。

「月」ではなく「週次」の血糖モニタリングをGAで実現し、
糖尿病の重症化予防などに貢献するのが狙い

 糖尿病の発症・重症化予防の重要な要素の一つは日常的な血糖モニタリングであり、そのためのデバイスも普及しているが、世界的にはほとんど重症患者にしか使用されていないのが現状といわれる。その理由は、自己血糖測定には医療保険が適用されず、数ヵ月ごとの通院時に測定する糖化アルブミン(HbA1c)検査のみが適用対象となっているためだ、と同社は指摘する。とはいうものの、血糖値の主要なバイオマーカーとしてエビデンスがあるのはHbA1cのみであり、そしてこのバイオマーカーが信頼できる期間の単位が1−2ヵ月であることも事実だ。

 同社は日常的なモニタリングを可能にするため、現在、副次的に用いられている糖化アルブミン(GA)に着目した。直近1~2週間の平均血糖や食後高血糖の変化をよく反映することが知られているGAは、薬物療法、食事療法、運動療法などの医療介入や患者の行動変容の効果を測りやすいため、治療効果を持続させるための「行動変容の指標」として活用できるのではと考えたのだ。ただ現在使われている検査機器は大型のため、メイン指標として用いられるのは治療の開始時や治療薬を変えた時など短期的な血糖の改善を見たい場合や、透析患者等HbA1cが安定しない症例に限られている。

 そこで同社は社外取締役を務めている東京大学工学部マテリアル工学科の坂田利弥准教授と、東京大学医学部付属病院病態栄養治療部の窪田直人部長、同病院糖尿病・代謝内科の相原允一特任助教らからなる医工連携の共同研究グループを組織。家庭でも使えるサイズで、かつ針を使う必要のない非侵襲の測定デバイスの研究開発に取り組んでいる。測定値の信頼性、指標としての有効性については熊本の陣内病院と臨床研究を行っており、GAが血液だけでなく涙液や唾液に含まれ相互に強い相関を持っていること、また、週次でGAを測定することが糖尿病患者の行動変容を導き、GA値・体重・肝機能を改善する可能性についても有望なデータを得られたという※1。これらの成果をもとに同社では、GAを診断指標であるHbA1cの代替としてではなく、その間の治療と行動変容をサポートする「行動変容指標」として活用し、その活用支援を行えるアプリも含めた「IoT血糖モニタリングサービス」の開発を進めている。

 同社は今回の調達資金でこれらの研究開発を進めるとともに、直近の目標としてはクリニックや薬局向けの血液GA測定システムの製造販売承認を目指し、並行して家庭向けの開発も加速していくとしている。なお前者に関してはすでに承認申請に向け、陣内病院をパートナーとして標準検体を開発する臨床研究を行なっている。

※1 同社では先日の第64回日本糖尿病学会年次学術集会で発表したほか、2020年に学術誌で論文を発表している。