有識者会議が提言 「AI・デジタルヘルスによる療法の保険償還のため新たな基準、体制を」

NEWS

「デジタルヘルスの進歩を見据えた医療技術の保険償還のあり方に関する研究会」(座長:国際医療福祉大学 名誉学長 谷修一氏、公益財団法人医療機器センター設置)が5回にわたる会合を終え、報告書をまとめた。その中で研究会は、デジタルヘルスの特性を踏まえた保険償還制度実現のために、5つの具体的な提案を具申。その中にはアウトカムを軸に据える評価法の導入や、中医協内の専門組織新設なども含まれた。

「デジタルヘルスの特長を積極的に評価すべき」

研究会は、一部カテゴリの医療機器認証業務、および臨床工学技士など関連技術専門職の試験、研修などを行う公益財団法人医療機器センターが設置した会議体。メンバーには加藤浩晃氏(デジタルハリウッド大学大学院 客員教授)、武藤真祐氏(医療法人社団鉄祐会 理事長)、園生智弘氏(日立総合病院救命救急センター医師=東京大学救急科学)ら、デジタルヘルスの社会実装に取り組む有識者も名を連ねている。

今回まとめられた報告書に通底する研究会の課題意識は、現在の医療技術の評価方法についてだ。現在の評価体系では、上乗せ評価の基準は患者にとっての臨床的有効性・安全性だが、デジタルヘルスの効力は医療従事者の負担軽減、医療従事者間の技術の平準化、患者の利便性向上等に及ぼすところが多いため評価基準にマッチせず、上乗せ評価は得られにくいという。研究会ではこうしたデジタルヘルスの特長を踏まえた評価体系やそのための体制の構築が必要だとし、そのために以下の5つの具体的な提言を行っている。

① 包括評価

デジタルヘルスに関する医療技術(の中で医療機器に該当するもの)は、技術料のなかで 「包括評価」を行う。 これによりライフサイクルが短く、改善・改良が頻繁に行われる医療機器であっても、 技術料に包括されることで、製造販売承認が得られた後早期に保険に導入できる環境が整備できる。

② 得られる効果(アウトカム)による評価

デジタルヘルスに関する医療技術の保険償還については、ストラクチャー評価(構造)及びプロセス評価(過程)を主とした出来高による評価体系を、当該技術によってもたらされる効果(アウトカム(健康アウトカムや経済的アウトカム))も評価する仕組みに見直す。

③ データの収集と医療技術の再評価

PHR(personal health record)や ePRO(患者報告アウトカム電子システム)等で一定期間収集されたデータを、医療技術としての再評価(加算、減算もあり得る)に活用する仕組みの導入を行う。

④ デジタルヘルスに関する医療技術を評価する新しい組織の設置

デジタルヘルスに関する医療技術は、ヘルスデータサイエンス、アルゴリズム設計・解析、ビッグデータ解析、行動経済学などこれまでの医療技術で評価してきたものと異なる分野の専門性を求められており、その分野の専門家も、医療従事者とともに評価する視点が必要である。従って、中医協総会や診療報酬基本問題小委員会での通常の議論とは別に、医薬品や医療機器のように専門性やその業界の意見を反映した専門的な検討が行われる新規の専門の組織を中医協に設置することが必要。

⑤ デジタルヘルスに関する医療技術に即した報酬項目の新設

④と並行して、その報酬上の評価の位置づけについても、点数表上新たな項目を設けることが必要。項目の新設については、手術の手技料のように既存の類する技術料の枝番として評価を追加する方法や、特掲診療料の「部」(医学管理等、在宅医療、処置、手術などと同じ扱い)そのものを追加し、全くの別の評価項目とする方法などが考えられる。別項目の評価として明示することにより、医療保険で評価されているデジタルヘルスに関する医療技術とそうでないものを明確に区別することができる。

報告書ではさらに、今後の各方面での議論の深化に資するよう、直近の診療報酬改定から適正に評価することを想定した具体的な評価モデルについても言及している。

外部リンク:公益財団法人 医療機器センター デジタルヘルスの進歩を見据えた 医療技術の保険償還のあり方に関する研究会 (略称:AI・デジタルヘルス研究会) からの提言(PDF)

関連記事

NEWS

Posted by Shigeru Kawada