オンライン診療指針、改定終え事務連絡発出 「かかりつけの医師」の定義はQ&Aに提示

 厚生労働省は1月28日、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定案について、パブリックコメント募集期間の終了を受け正式に文案を確定、事務連絡を発出して周知した。パブリックコメントを通じて変更された箇所はなく、そのまま正式に制定となった。なお適用開始については、コロナ禍の時限的措置が終了してからとなる。以下、編集部で主なポイントについて解説する。

「診療前相談」の定義を正式に盛り込む オンライン受診勧奨のいち形態に

 今回の改定の主眼は、初診からのオンライン診療を認めること、そのための要件を定めることだったが、その一環として、オンライン診療が可能な情報が得られるかを確認する「診療前相談」というプロセスが創設された。指針の中では「用語の定義」のなかで、オンライン受診勧奨のいち形態として以下のように定義された。

(診療前相談)
診療前相談は、日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師(以下、本指針において「かかりつけの医師」という。)以外の医師が初診からのオンライン診療を行おうとする場合(医師が患者の医学的情報を十分に把握できる場合を除く。)に、医師-患者間で映像を用いたリアルタイムのやりとりを行い、医師が患者の症状及び医学的情報を確認する行為。適切な情報が把握でき、医師・患者双方がオンラインでの診療が可能であると判断し、相互に合意した場合にオンライン診療を実施することが可能である(オンライン診療を実施する場合においては、診療前相談で得た情報を診療録に記載する必要がある。オンライン診療に至らなかった場合にも診療前相談の記録は保存しておくことが望ましい。)。なお、診療前相談は、診断、処方その他の診療行為は含まない行為である。

 また「診療前相談」において確認する必要がある「医学的情報」については、指針内で以下のように示された。電子カルテ以外の電磁的記録が具体的に盛り込まれたのは初めてで、今後オンライン診療の要件見直しの際、一定の指標となることが期待される。

②最低限遵守する事項

ⅰ直接の対面診察と同等でないにしても、これに代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を、オンライン診療により得ること。
(中略)
ⅲ初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うこと。ただし、既往歴、服薬歴、アレルギー歴等の他、症状から勘案して問診及び視診を補完するのに必要な医学的情報を過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳、PersonalHealthRecord(以下「PHR」という。)等から把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも実施できる(後者の場合、事前に得た情報を診療録に記載する必要がある。)

「かかりつけの医師」の定義は広めに解釈可能に 期間や定期的受診の有無に具体的要件示さず

 基本的に「診療前相談」は「かかりつけの医師」ではない医師が、初診からのオンライン診療を行おうとする場合必要とされる。「かかりつけの医師」の具体的な定義については、検討会でも厚生労働省に対し明確化を求められていたが、今回の制定にあたり、同時に発出されたQ&Aで以下のように示された。

Q5「かかりつけの医師」にあたるかどうかについて、患者と直接的な関係があると医師が判断でき+れば、最後の診療からの期間や定期的な受診の有無によって一律に制限するものではないと考えてよいですか

A5オンライン診療の適切な実施に関する指針における「かかりつけの医師」は、「日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師」としているところであり、最後の診療からの期間や定期的な受診の有無によって一律に制限するものではありません。

 なおQ&Aでは、診療前相談についてほかにも要件を解説している。

Q6 「かかりつけの医師」であっても診療前相談を行うことは可能ですか。

A6 「かかりつけの医師」であれば診療前相談を経ずにオンライン診療を行うことが可能ですが、患者 の症状や把握している情報から判断して必要な場合には診療前相談を行うことは妨げられません。 

 

Q7 診療前相談を効果的かつ効率的に行うため、診療前相談に先立って、メール、チャットその他の 方法により患者から情報を収集することは差し支えありませんか。

A7 差し支えありません。なお、その場合においても診療前相談は映像を用いたリアルタイムのやりと りで行ってください。

日本医学会連合のガイダンス遵守を求める

 今回の指針改定では、検討会での議論で重視され、厚生労働省の求めで日本医学会連合が策定した「オンライン診療の初診に関する提言」を事実上遵守し、適さない症状や薬剤などについては診療/処方を行わないよう一定の制限をかける内容が盛り込まれた。

V 指針の具体的適用
(中略)
(2) 適用対象
(中略)
②最低限遵守する事項
ⅰ直接の対面診察と同等でないにしても、これに代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を、オンライン診療により得ること。
ⅱオンライン診療の実施の可否の判断については、安全にオンライン診療が行えることを確認しておくことが必要であることから、オンライン診療が困難な症状として、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえて医師が判断し、オンライン診療が適さない場合には対面診療を実施する(対面診療が可能な医療機関を紹介する場合も含む。)こと。なお、緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促すことに留意する。 

(5) 薬剤処方・管理
(中略)
②最低限遵守する事項

ⅰ現にオンライン診療を行っている疾患の延長とされる症状に対応するために必要な医薬品については、医師の判断により、オンライン診療による処方を可能とする。患者の心身の状態の十分な評価を行うため、初診からのオンライン診療の場合及び新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこと。ただし、初診の場合には以下の処方は行わないこと。
●麻薬及び向精神薬の処方

●基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤)の処方
●基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方
また、重篤な副作用が発現するおそれのある医薬品の処方は特に慎重に行うとともに、処方後の患者の服薬状況の把握に努めるなど、そのリスク管理に最大限努めなければならない。

医師に対するシステムのセキュリティ確保の要求レベル、格下げ

  検討会の一部構成員から「システムのセキュリティ確保に対する医師へ要求が過大だ」と指摘された点に関しては今回、「十分なセキュリティ対策が講じられていることを確認しなければならない」という表現から「V2(5)に定める内容及び関連するガイドラインに沿って適切に行うことが求められる」※1という表現になり、医師に求める責任度合いが明確に下げられていたが、この点もそのまま正式に盛り込まれている。

※1 この項目は「通信環境(情報セキュリティ・プライバシー・利用端末)」と題され、医師とオンライン診療システム事業者が遵守すべき事項を列挙しているが、今回の改定ではこの部分の変更はない。

外部リンク:
オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和4年1月一部改訂)
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A(令和4年1月改定)
オンライン診療の初診に関する提言(日本医学会連合)