スタンフォード大らの研究チームが、様々なセンシングデバイスを洋式トイレに後付けする機器を開発し、検査に対する基本的な有用性を確認したと研究成果を論文で発表した。3つのカメラ、2つのセンサーなどを搭載し、尿流量や便検査などが行えるという。
複数の尿検査と便の検査が可能
研究成果を発表したのはスタンフォード大のSanjiv Sam Gambhir医学博士を筆頭とするアメリカ、韓国、カナダ、オランダの研究者からなる国際的研究グループ。洋式便座に圧力センサー、モーションセンサー、複数のカメラ、尿検査試験紙を導出する可動式点滴検査デバイスを搭載する機器を開発し、21人の被験者で基本的な性能を確認した。この機器ではさまざまな尿検査と便の画像解析が可能になるという。
具体的には、圧力計で被験者が便座に座ったことを識別。尿が放出されるタイミングで可動式点滴検査デバイスを導出し、試験紙を当てて尿成分分析。またカメラで尿の流れを撮影し、画像処理する。これらの動作で白血球数、血液の汚れ、タンパク質、尿流量を測定でき、感染症から膀胱がん、腎不全といった、さまざまな病気の可能性を示唆することができるとしている。現状では10種類のバイオマーカーを測定できるという。
便に関しては同様にカメラで撮影。画像を「形状」と「硬さ」を基準に7段階に分類する指標を基に、医師2人が便の画像データセット2362枚にアノテーションを行なったあと、ディープラーニングで学習させた。学習した結果構築されたアルゴリズムで分類したところ、便秘、正常、下痢の状態判別において、AUC0.91から0.97の感度を達成した。同じ画像を判別した医学生と同等のパフォーマンスだとしている。
本人同定は「肛門のしわ」などで識別
またこうして採取するデータの人的同定については、2つの生体識別技術を活用している。1つめは水洗レバーに指紋識別センサーを取り付けたものだが、実はたまに流さない人がいるなどで厳密な同定ができない可能性があるという。そこで研究チームは新たに、肛門のしわを撮影し識別に活用する技術を開発した。どちらのデータももちろん識別のみに使用され、研究者も見ることがないよう設計されている。
研究チームは、今後、こうしたかたちで採取され同定されたデータを、HIPPA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)に準拠するクラウドに送り、尿に血が混じっているなどの疑わしいことが起きた場合に医療チームへアラートを送信し、適切な診断が行えるようにする仕組みを構築することを目指している。
外部リンク:(論文)A mountable toilet system for personalized health monitoring via the analysis of excreta