武田薬品、ICT活用を前提としたパーキンソン病の診療フローの臨床研究を神奈川県下で実施
武田薬品と神奈川県は、昨年締結した協定に基づく取り組みの一環として、パーキンソン病患者に対するウェアラブル機器とオンライン診療を活用する診療フローの臨床研究を行うと発表した。県のほかにも多くの事業者が研究に関わる予定で、ICT活用を前提とする次世代診療モデルの提示に繋がる可能性がある。
AppleWatchと専用スマホアプリで症状をモニタリング、オンライン診療で経過観察
武田製薬が神奈川県の側面支援を得て実施する今回の臨床研究は、パーキンソン病患者と家族に新しい診療とケアのかたちを提示するものだ。パーキンソン病は手足などが不随意に動く「振戦」、顔・指などの筋肉が硬くなる「筋強剛」など動作障害が主症状で、症状の重さによっては通院が困難なケースもあり、この場合付き添う家族にも過大な負担がかかる。専門医も多いとは言えず、そのためつらい症状を我慢しながら懸命に遠くの専門医のもとへ通う患者もいるのが現状だ。また医療側も、この疾患が多様で変動する症状を持つにもかかわらず、対面で診察している間しか症状を確認できず包括的な把握が困難という課題もある。
臨床研究ではこうした患者に対し、対面診療、ウェアラブル機器で計測する症状のモニタリング、オンライン診療による経過観察、オンライン服薬指導を4ヵ月行うことで、課題に対応できるかを観察する。専用アプリ「モニパド」がインストールされたiPhoneとAppleWatchを患者に貸与し、各種センサーで在宅時の「振戦」「ジスキネジア」「活動量」などの症状を自動計測。2回目までの診察は対面診療、その後の2回はオンライン診療とオンライン服薬指導で実施し、患者の身体的・経済的負担が軽減するか、医師がより正確な診断ができるかなどを評価する。
様々な企業が診療フローに協力
この臨床研究にはさまざま企業が診療フロー実現に協力している。専用アプリ「モニパド」はインテグリティ・ヘルスケアが受託開発し、オンライン診療にも同社の「YaDoc」を活用するほか、デバイスはNTTドコモが貸与。薬剤の配送はメディセオが協力する。また臨床研究から得られたデータはセールスフォース・ドットコムの「SalesforceHealthCloud」を中心としたプラットフォームを活用、患者情報を包括的に管理・分析を行う。武田製薬はデロイトトーマツコンサルティング、ボストンコンサルティンググループの協力を得て全体のサポート、この研究成果を元にしたさらなる調査や分析などを行うとしている。
なお臨床研究の代表医師は聖マリアンナ医科大学内科学(脳神経内科)教授の山野嘉久氏で、臨床試験情報もJAPIC(一般財団法人日本医薬情報センター)の臨床試験情報ページで検索・閲覧できる(登録番号:JapicCTI-205296)。