新型コロナとの戦い、ICTが見せた遠隔医療の可能性 聖マリアンナ医大病院で実践

コロナ禍「第一波」の収束が見えてきた2020年5月25日、まもなく政府の緊急事態宣言は解除される見通しとなった。しかし、もちろん医療現場で患者がゼロになったわけではなく、指定病院などには重症患者、中等症患者が現在も2,300人弱入院、治療を受けている(2020年5月24日現在)。日本における組織的臨床対応の端緒を担った、神奈川県川崎市の聖マリアンナ医科大学病院では、医療従事者の感染を防ぐため積極的にICTツールを導入。現在も患者を見守り続けている。

クルーズ船からの患者対応がきっかけ 院内区切り遠隔医療

同病院は、2月初旬から横浜港で検疫を受けていた「ダイヤモンド・プリンセス号」で発生した患者の搬送先の一つとして、県の調整本部から要請を受け、当初より一貫して重症患者を中心に収容・治療にあたっている。患者を収容するにあたり、急遽病棟内をゾーニングし、大規模な陰圧スペースを臨時に設置。通常の診療に影響させないよう対策をとった。その上で、治療にあたるスタッフ全員が必要な情報を常に得られるよう、まずは情報共有ツールを展開した。

「JOIN®︎」でのオンタイムの情報共有

 

聖マリアンナ医科大学病院が川崎市に提出した報告書より http://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000116/116519/2_covid_ver5.pdf
聖マリアンナ医科大学病院が川崎市に提出した報告書より http://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000116/116519/2_covid_ver5.pdf

導入したのは、アルム社の情報共有ツール「JOIN®︎。このソフトウェアでは様々な検査画像を手元のスマートフォンで確認できるほか、関係者全員が即座に見られるチャット画面で、手早く情報共有ができるメリットがある。実は以前よりこのツールを院内で活用しており、さっそくこのツールを横展開。関連病院の関係者も含め、連日行われていた会議の議事録のほか、患者経過、問題点の共有など、メールも併用してオンタイムに情報共有できる環境を構築した。

感染防御と治療を両立させる、Webカメラでの遠隔モニタリング

そして設置した陰圧スペースに収容した患者に対し、医療従事者の二次感染を防ぐため、遠隔操作でズーム等が行えるSafie社のWebカメラを導入した。

聖マリアンナ医科大学病院が川崎市に提出した報告書より http://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000116/116519/2_covid_ver5.pdf

同社のカメラは任意の場所に手軽に設置でき、PCやスマートフォンから画像の確認だけでなく、カメラの向き、ズームなども行える。この機能を利用し、病室内での医療行為を前もって計画することで、病室での滞在時間を削減し、感染リスクを低減した。同時にこのカメラを使って患者だけでなく、人工呼吸器画面と体外式膜型人工肺(ECMO)画面、バイタルサインモニターの画面も確認。別室から患者の様子を観察しつつバイタルサインを検証、呼吸器設定と ECMOの設定を評価することができるようになった。さらに、指導医による在宅からのアドバイスも受けられるようにし、患者との接触を最小限におさえながら万全のサポート体制を敷くことができた。

同病院は、日本において新型コロナ患者の対応をもっとも早くから組織的に行ってきた病院のひとつだ。他院が診療拒否した患者も受け入れ、最後の砦として機能し続けるため、ICTツールを活用した24時間体制がいまも維持されている。