WELQ問題、第三者委員会が報告書公表 記事10本に法令違反の可能性認定

 

DeNAのIRサイトにて公表された報告書の表紙

 

2017年3月13日、DeNAは昨年来問題となり、事業停止したキュレーション事業に関する第三者委員会による3月11日付の調査報告書を公表した。報告書では10件の記事について、医薬品医療機器等法について8本、医療法、健康増進法については各1本、法令違反の可能性を認定した。DeNAは報告書を受け3月13日に会見を行う。

 

WELQチームの「異常性」が改めて明らかに

報告書ではキュレーション事業に属する10サイトについて、iemo買収より始まった事業体制整備から問題発生までの経緯を聞き取り調査、および記事のサンプル調査を行った。記事のサンプル調査の結果は、文章のコピーの可能性が最大5.6%、画像に関しては最大74万個について複製権侵害の可能性があるとした。

事業推進体制についての報告では、10サイトそれぞれに大きな問題が内在したことが明らかにされているが、その中でも医療情報を扱っていた「WELQ」チームの異常性が浮き彫りになっている。記事作成編集にあたって、WELQチームでは、他のサイトと比較しても徹底的にタスクの分担と自動化がはかられていた。まず執筆するトピック(ワード)は機械的にインターネット上の検索数から選ばれ、事実上そのワードで上位になっている他のサイトを「ターゲットサイト」としてライターに提示しながら、その中の記述の加工手法をマニュアルによって具体的に指南していた。このプロセスの中には、知見を持つ医療関係者による監修や法令面のチェックはまったく入っていなかったばかりか、プロセス自体がほぼ外注されており、社内のディレクターは、外注した関係者がインターネット上のチャットツールで進めているやりとりを事実上消極的にウォッチしているのみであった。また公開された記事を事後的にコピーチェックするツールが他部署で導入された際、そのツールによる記事の評価を当初は依頼していたが、記事を大量に作成する作業に忙殺される中、それも行なわれなくなっていったという。

さらに、報告書ではWELQの正確性を欠く記事を読んだ読者による「被害」の事例も明らかになっている。WELQに存在したムカデに噛まれた際の対処法に関する記事には「可能なら、46℃〜50℃ほどの熱いお湯をシャワーで当て続けるようにしてください」という記述があった。この記事に関してDeNAの新潟カスタマーセンターには、病院関係者より、ムカデに噛まれ、さらに火傷を負って来院するケースが増えており、患者からこのページを読んだことを報告されたとして「お願いなので完全に削除していただけないでしょうか」と要請されたという事例を紹介している。

 

第三者委員会「社会全体に意義ある価値を」

報告書は問題にいたった原因が大きく4つあると提示し、そもそもキュレーションそのものに対する理解不足、メディアを指向するにも関わらず事業価値と営業利益偏重のKPIを掲げたこと、法務部を中心にリスクを指摘する声があったにも関わらず具体的な動きに至らなかったことなどを指摘した。そこには事業に関わった各社員や上層部個々人の理解不足、スキル不足も含まれている。委員会の聞き取りでは、著作権や関連法令を遵守することへの根本的な理解ができていない人間も見られたという。委員会は、再発防止の提言のなかで、キュレーション事業を仮に再開するのであれば、次の点を十分に検討すべきとした。

 

  1. キュレーション事業について適切な定義を行い、読者・社会に提供する価値を明確化
  2. 情報発信における責任の明確化
  3. オリジナルコンテンツの作成者にもメリットのある互恵の仕組みの確立
  4. 外部委託するにしろ、その外部者に求めることと求めないことの明確化

 

法令違反状態の解消と賠償に加え、指摘されたこれらの点の中には、基本的かつ根源的な事項も複数含まれている。DeNAがこの報告書を踏まえてどのような対応を行なうか注目される。