人工神経接続システムで「10分で機能再建」、脳梗塞からのリハビリ早期回復に光

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 東京都医学総合研究所の研究グループ「脳機能再建プロジェクト」は、手の運動機能を持たない脳領域に「人工神経接続システム」を使って新たに運動機能を付与することに成功したと発表した。システム利用開始後約10分で、モデル動物が、麻痺した手を自分の意志で動かせるようになったという。

10分で機能再建、脳活動領域を「再適応」

 成果を発表したのは東京都医学総合研究所「脳機能再建プロジェクト」の西村幸男プロジェクトリーダー、加藤健治氏らの研究グループ。同グループが開発した「人工神経接続システム」は、脳の神経細胞と似たような役割をするコンピューターとされ、上位の神経細胞の情報を受け取り(入力)、次の細胞にその情報を伝える(出力)ように設計されている。これを利用し、脳梗塞により脳と脊髄を繋ぐ神経経路を損傷しているモデル動物の損傷部位をバイパスし、脳の信号を麻痺した筋肉に伝える実験を行った。

 結果、10分程度で脳梗塞モデル動物は人工神経接続システムに適応し、麻痺した手を自在に動かすことができるまでに回復した。その際、約25分で麻痺した手の運動を司る脳領域が、小さく集中するように脳領域を超えた大規模な脳活動の適応が起こったという。すなわち、これまで顔や肩の運動を司る脳領域が、人工神経接続を介して麻痺した手を自分の意思で動かせるようになった。また、もともと運動機能を持たない脳領域で感覚機能を持つ体性感覚野でも、同様に麻痺した手を動かせるように適応したことを確認した。

 この結果から、研究チームは、もともとの脳領域の役割に関わらず、残存している脳領域を繋げば随意運動機能の再建ができる可能性を示すものだとし、脳梗塞患者や脊髄損傷患者にとって、失われた運動機能を再獲得するための革新的な治療法となりうるとしている。今後は、人工神経接続システムとの長期接続により神経の繋がりを強化し、同システムがなくとも身体を自分の意志で動かせるように回復できるかどうかの検証のほか、ヒト(脳梗塞患者と脊髄損傷患者)での臨床試験に向けて取り組みを強化する。なお、研究成果はNature Communicationsオンライン版に掲載された。

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