大規模同時のがん遺伝子検査を実現する「Todai OncoPanel」、先進医療Bで臨床試験開始
2018年10月4日、東京大学は、独自に開発したがん遺伝子パネル検査であるTodai OncoPanelの臨床性能試験を、連携医療機関とともに先進医療Bで実施すると発表した。目標症例は200例で、対象となる被験者は標準治療がない、もしくは終了および終了が見込まれる患者。
DNA、RNAともに450以上の遺伝子検査を一気に実施できる「Todai OncoPanel」
近年、遺伝子検査によって遺伝子の変異が疾患の発生、進行に大きく関わる場合があることが明らかになってきているが、現在主流となっている遺伝子検査は検査対象となる遺伝子や疾患が少なく、一般的なものになっていない。しかしここ数年、一度に多くの遺伝子を解析する「遺伝子パネル検査」を実現できる「次世代シークエンサー」がメーカーより発表されるなど、この分野には目覚ましい技術革新が起きている。この技術を活かし、日本でもいくつかの大学が独自に遺伝子パネル検査を実現すべく研究プロジェクトを立ち上げている。
その中でも東京大学が開発を進めている「Todai OncoPanel(TOP)」は、その検査能力において注目されているプロジェクトだ。がんに関連すると見られている464のDNAと、463のRNAも同時に検査し、診断および分子標的治療薬の選択に直結するような融合遺伝子※1の検出精度が高いという。そのため、融合遺伝子の存在が特徴的な肉腫などで有用な情報が得られる頻度が高いとされる。 また全体として多くの遺伝子変異の総数を捉えることが可能なため、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすいことが知られる「Hypermutator」※2の検出感度も高くなるとも期待されている。
先進医療Bの適用で費用は91.5万円
研究対象はがんと診断されている患者のうち「標準治療による根治が困難」 「標準治療がない、あるいは終了もしくは終了が見込まれ」「全身状態が良好である」患者に限られる。今回の臨床試験は先進医療Bとして行われ、ゲノム解析に係る検体の作成、遺伝子解析に関わる費用、および同手技に関連する人件費は患者の自己負担となり、費用は915,000円。その他の入院あるいは外来診療に係る費用は保険診療となる。
※1 融合遺伝子
がん細胞等において、染色体の再構成(転座,挿入,逆位など)を介し複数の遺伝子が連結されて生じる新たな遺伝子。※2 Hypermutator
hypermutator phenotypeともいう。非常に多くの遺伝子変異の蓄積と多様性を有するゲノムの状態を指し、がんの発生や悪性化にかかわることが知られている。